春色収集。自転車で出合うときめく色と風景|NEW ANGLE vol.3
わたしたちの生活には、まだ見ぬトキメキがたくさん潜んでいる。少し視点を変えると、いつもの道でも新しいことに気付けたり。縁遠く感じていたことも、誘われてやってみると案外しっくりきたり。HATSUDO編集部が、日常から非日常までさまざまな体験を通してトキメキを発見する連載「NEW ANGLE」をお届けします。
2024.04.26
INDEX
春と言えば、何色?
桜のピンク色、穏やかな空の青色、街の人が着ているロンTの黄色……春と聞いて思い浮かべる色は、人それぞれ違う。みんなは一体どんな風景や色に春を感じるのだろう?と気になり、「春色」を収集する冒険に出ることにした。
今回は、徒歩よりちょっと遠くまで、広い範囲を巡りながら集めようと、自転車で移動することに。きれいな桜をゆったり見られるという旧中川をスタート地点に、近隣の東大島駅から自転車を走らせる。
集合住宅の間に、例年より遅く咲いた桜の木を一本見つけた。道路脇に咲く桜はいつも見上げるものだと思っていたけど、真横から見たり、見下ろしてみたり、この住宅に住む人はきっといろいろな景色を見ているんだろうなと想像した。天気によって少し違う色に見える桜を観察したり、ベランダに飛んでくる花びらで春を感じたりするのかもしれない。
道の片隅を見てみると、黄色い「たんぽぽ」が寄り添う姿や、オレンジの「ナガミヒナゲシ」が一輪空に向かって咲く姿が見える。いつもは見逃してしまうけど、収集を意識しているからこそ見つけられた。
のんびり過ごす猫の邪魔をしない程度に、自転車を停めて写真を撮る。猫はどんな景色にも似合う。
旧中川で出合うのどかな風景
旧中川に着き、川沿いを北へ進んでいく。
橋の下で、凛としたアオサギに出合う。後頭部・脇・翼の先は、他に例えようがないきれいな青だった。
アオサギをずっと見つめていたら、近くで釣りをしている人が「もう何十年もここで釣りをしているけど、このアオサギはちょっと性格が悪いよ。向こうのほうに独り立ちした子どもがいて、その子はいい子だ」と話しかけてくれた。その後も暫く見つめていると、その方の竿に魚がかかり、引き上げると、すかさずアオサギが狙って食べていた。こういうところを性格が悪いと言っているのかなと思いつつ、「しょうがないな」と少し微笑みながらお裾分けしている姿にほっこりした。
下町・亀戸で春めく色たち
しばらく東の方へ走る。
公園の脇に咲く黄色い花、「ナノハナ」。ぐんぐん伸びている様子に、パワーを感じる。今日着ていた服とリンクした。「そばうどん」ののれんが、なんだかかわいらしい。緑の店舗テントと、道路のグリーンベルト(歩道エリア)のもリンクした。それがなんだと言われたら説明しにくいけど、視覚的にキュンとする。
荒川を横断。柔らかい水色に包まれる
荒川に掛かる木根川橋を通り、葛飾区の方へ渡る。夏よりも薄く、柔らかい水色の空が心地いい。
ゆっくりと街中を走っていると、街路灯にサッカーボールを発見。上に蹴り上げられ、空に浮かんだボールのようで、なんだか懐かしい気持ちになった。しばらく自転車を走らせてもこの街路灯が続くので、なんだろう?と思っていたら、『キャプテン翼』の作者の高橋陽一さんの出身地だった。
レトロな風情を残す京成立石
京成電鉄押上線の立石駅にたどり着いた。
下町として独特な雰囲気を残すこの街は、大規模な再開発が進められ、少しずつ変わりつつある。せんべろで有名な「呑んべ横丁」は昨年撤去になり、八百屋や惣菜屋など、昭和レトロな店が立ち並ぶ「仲見世通り」も、昨年都市計画が決定した。
月日の流れを感じる「立石駅通り商店街」の看板が、ちょうど散り始めた桜の花びらにリンクする。やがてタワーマンションや大型商業施設ができ、2028年にはなくなってしまうこの街の景色を、しっかりと見ておこうと思った。
目的地がない冒険でいろいろな春の色に出合い、心に残る街とも出合うことができた。
春色を収集しようと、自転車で冒険した一日。一つでも巡る理由があれば、冒険はちょっと楽しくなる。
ピンク、黄色、青、緑…春を感じたのは一色ではなかったが、どれもわたしたちがときめく色。春以外の季節では、どんな色を収集できるだろうか。また季節が変わる頃に、探検してみよう。
今回巡った主なスポット
今回の冒険を共にした電動アシスト自転車
- ・PAS CITY-C (マットロゼ)
- ・PAS CRAIG (マットラベンダー)
思い立ったはいいものの、学生のとき以来の自転車且つ、体力にも正直不安があり(笑)思い切って電動アシスト自転車に。ペダルを漕ぐと想像を遥かに上回るアシスト力で、「やばい!これはどこまでも行けるのでは…」と興奮。結局プラプラと15kmも、半日ずっとサイクリングしちゃいました。でも足の疲れはまったくなくて、いい相棒に巡り合えた感。夏を待たずとも、また収集へと走り出したくなっています。