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ぼくらのエンジン

壁に想いを込めて。横浜の街に巨大ウォールアートを描いた3人の大人たち

9月某日。京急・日ノ出町駅から徒歩数分にある、神奈川県横浜市野毛の繁華街。とある雑居ビルの前を通りがかった人が、こぞって空を見上げている。5階建てのビルに組まれた足場には人影があるが、外壁補修の工事員ではおそらくない。筆を片手に、今まさにその謎の壁画を描いていたからだ。

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横浜の繁華街に突如現われた巨大ストリートアート

男たちの名は、Gravityfreeのdjow(デジョー)と8g(エイジ)、そしてKensuke Takahashi。ウォールアート界において国内外から人気を集めるアーティストたちだ。縦約18m×横約12mという巨大なキャンバスに向き合い、足場の上を軽々と移動しながら、迷うことなく鮮やかに色を乗せていく。

Gravityfree(写真左)
djow(デジョー/Toshio ono)と8g(エイジ/Eiji miyata)による2人組みの絵画作家。2002年よりクラブイベントにて絵を描く遊びから始まったライブペイントは、FUJI ROCK FESTIVALを中心とする大型野外フェスに数多く出演し、ライブペイントカルチャーを広く認知させる存在となる。
https://gravityfree.jp/



Kensuke Takahashi(写真右)
横浜出身在住の画家、イラストレーター、ペインター。確かな描写力・緻密なテクニック・現実を飛び越える自由な発想力で、あえて画風を決めずに描くスタイルで壁画や飲食店舗内壁面アート、企業や行政へのアートワーク提供やライブペインティングイベント出演など、多岐に活動。
https://www.instagram.com/kensuketakahashi1977.art/



さて、街行く人が「何をしているんだ?」と思うのも無理はないこのウォールアート。じつは、GravityfreeとKensuke Takahashi、ヤマハ発動機によるコラボアートなのである。

3人のアーティストが描く「BORN AGAIN」

3者のコラボの始まりは、2022年末に遡る。正月に縁起の良い「鯉の滝登り」をメカニカルに表現しながら、その年の干支であるウサギがライディングをする様をニューイヤーグリーティングとして描いた。

このコラボアートをきっかけに、新たなメッセージをウォールアートに込めたいと考えたのはGravityfreeの二人。思い浮かんだストーリーをそのままラフとして描き上げ、すぐさまKensuke Takahashiにコンタクトした。

「テーマは“BORN AGAIN”。かつてたくさん働いていたロボットが、動かなくなってもなお動物たちや植物たちにずっと惜しまれているところを描いてみたいなと。新しいものとか、これからを担うものとかはよく描かれるけれど、役目を終えたものって意外と描かれないから。でも、あえてそれを表現することで、逆に、現役時に動物たちや植物たちから愛されていたことが伝わると考えたんです」

そう語るのは、Gravityfreeのdjow。8gが続ける。

「今はあまり見かけなくなったけど、草むらで朽ち果てているサビだらけのバイクとかクルマってあるじゃないですか。草むらのヒーロー的な。見る影もないようなボロボロの姿でも、きっと昔はピカピカの新品だったはずで、大切な誰かを乗せたり、きれいな景色を眺めたり、いろんなストーリーがあったはずなんですよね。ここにいるロボットも、きっとそういう素敵なもの。そして、いつかその想いとともに何かに生まれ変わるんです」

どんなモノでもいずれ終わりが来る。しかし、次の新しいモノが生まれていくこともまた事実だ。ラフを受け取ったKensuke Takahashiは、コンセプトを理解しながらも、最初はとまどいがあったと振り返る。

「Gravityfreeとはこれまでも共に作品を作ってきましたが、予想外というか、そう来たかという感じでしたね。同時に、これってヤマハ発動機からするとNGなのでは……?という不安もありました。だって、モノが朽ちてるんですから。でも、しっかりとコンセプトを理解いただき、何の問題もなく一発OK。ああ、自由に描いていいんだって思いましたよ。じつは、最初のラフではロボットだけだったんです。僕が描くスペースを空けてくれていたから、そこにロボットに寄り添う動物たちを描こうって決めました」

大胆で緻密、自由で計画的なペイントワーク

これまでも数々のアートウォールを描いてきた3人。巨大な壁に絵を描く行為は、一般人からするととてつもなく大変な作業だ。この記事を執筆した段階が、描き始めてから4日目。さらにもう5日ほどで完成するのだという。

ビルの絵をよく見てみると、縦横に薄い線が走っているのがわかるだろうか。いわくこれがグリッド線で、手元のスマホには同じくグリッド線を引いた縮小イラストが映し出されている。

「いろんなやり方があると思いますが、僕らはこのグリッド線と縮小イラストを見ながら、フリーハンドで描いていきます。壁の大きさは関係ありません。経験上、この手法ならどんなに大きなキャンバスでも描くことができます」

特殊能力ともいうべきテクニックで淡々と描く姿は、アーティストというよりむしろ職人に近いかもしれない。しかし、すべてが計画どおりにいくわけではない。

「僕らからすると“工事”のようなものなんですよ。綿密に計画して、それをコツコツ計画どおりに積み上げて……7割くらいは、準備したものをただただ正確にこなす作業です。でも、残り3割はそうじゃない。実際に描いたものが目で見ると違って悩むこともあるし、予定していた色をやめて直観で塗り替えることもある。ものすごく計画して作っていくんだけど、やっぱり、ほんとうに描くべきものは動いていくというか、ライブのような感じで。その感覚を感じながら絵を描いているときが、いちばんおもしろいのかもしれないですね」

ウォールアートを見た人へ、その先で伝えたいこと

アーティストにとって、企業とのコラボレーションはひとつの仕事でもある。しかし、その描く姿は、大人になっても「描くのが楽しい」とほほ笑む少年のようだった。

絵描きとしては遅咲きだったと語るKensuke Takahashiは、「絵」というトキメキが今も原動力だと語る。

「子どものころから絵を描くのが好きで、落書きとかはよくしていたけど、プロとして仕事をしはじめたのは27歳からでした。一度は就職して、違う仕事もしていましたけど、なんだかつまらないなともやもやしていて……自信も何もないしどうなるかわからなかったけど、絵を描くのが好きなことはたしかだったから、思い切って初めてみたんですよね。そうしたら、いろんな出会いが生まれて、今につながって。やんなきゃ何も始まらないなって、心からそう思います」

同じく、絵を描くことが好きだったGravityfreeの二人も、その横で頷く

「僕らの場合は、絵を描きたくても描く場所がなかった。だから、クラブとかイベントとか、とにかく外に飛び出して自分たちで描く場所を作っていきましたね。不思議なもので、そうやって動いていると、似たような人とか同じ価値観の人たちが集まってくるんです。そこで仲間ができて、Kensuke Takahashiとも出会った。仕事とかお金とか、人生にはいろいろなしがらみが出てくるけど、少しずつでいいから変えていくアクションをしていくのが大事なのかな」

絵を描くということを仕事にし、今なお夢として持ち続ける3人。今回のウォールアートを通していちばん伝えたいことは何だろうか。

「BORN AGAINというテーマが伝わってくれたらうれしいですが、ほんとうは、ただ立ち止まって何かを考えてくれるきっかけになったらいいなと思っています。これはアートだから、メッセージを押し付けるものじゃない。ふと目にしたときに、何かひとつでも思ったり考えたり、誰かと想いを共有してくれればそれでいいんです」

 

3人の大人たちが横浜の街に描いた「BORN AGAIN」。きみは何を感じ、何を思うだろうか?

Gravityfree×Kensuke Takahashi×YAMAHA MOTOR
「BORN AGAIN」

場所:神奈川県横浜市中区宮川町2-38-1 iBOX BLD宮川町ビル
期間:2023年10月1日(日)~2023年12月31日(日)まで展示予定

CREDIT

Text:Raiden
Photo:Yosuke Suga

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