「俺たちの街が遊び場」だ。ゲーム×リアルでつくる自分らしい“トキメキ”のカタチ
「好きなことはありますか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。あるという人もいれば、ないという人もいるだろう。もしくは、わからない、自信がないという人もいるかもしれない。今回は、好きなことがあり、それを自らの手と熱い想いでつくり出している人たちのストーリーをお届けする。
2023.11.16
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限界を超えるeスポーツチーム「REJECT」
近年、急速な盛り上がりを見せているeスポーツの世界。その黎明期より活躍し、今なお最前線を駆け抜け続けているeスポーツチームが「REJECT」だ。アスリート(プロゲーマー)、ストリーマー、サポーター、クリエイターなどが所属し、15回にもおよぶ世界大会出場記録と、日本一の累計獲得賞金額を誇る。
2023年、彼らはひとつのスローガンを掲げた。「限界を超えろ。REJECT YOUR LIMITS」。eスポーツという競技のパフォーマンスや戦績を高めるだけでなく、あらゆるモノゴトの既成概念を打ち破り、日々挑戦を続けるという決意の表れだ。
そんな彼らが今回、文字どおり既成概念を打ち破るあるプロジェクトを発表した。ゲームの世界を超えた、ヤマハ発動機とのコラボレーションプロジェクトだ。
ゲームの世界でつくる「俺たちの街が遊び場」
「僕らはゲームというバーチャルの世界を舞台にしていますが、何のために戦っているのかといえば、e スポーツという競技を通して“トキメキや感動を多くの人に伝えていくため”だと考えています。このマインド、じつはヤマハ発動機さんと同じなんですよね。
そこで、ヤマハ発動機さんのバイクをゲームの世界で、そしてREJECTをリアルの世界で、お互いにつくれたらおもしろくなるんじゃないかなって」
ふだんはREJECTの営業部長を務めている岩村さん。幼少期から好きだったゲームを軸にしながら、まさに既成概念を打ち破る発想でプロジェクトの幕を開いた。
オンラインゲームFortniteの“島”を制作
選ばれた舞台は、今や3憶5000万人以上が熱狂するオンラインゲーム「Fortnite」。ここにヤマハ発動機の新型バイク「MT-125」の世界観を表現した“島(ゲームマップ)”をつくったという。
上の写真が実際の島のイメージ。つくったのはなんと、18歳のREJECTクリエイター・Kroum(くろうむ)さんだ。
Fortniteやゲームに詳しい人であればご存じだろう。現実や映画世界の建造物の再現や、緻密かつ繊細なデザインを得意とするFortniteクリエイティブクリエイターだ。今回の島でもその手腕を発揮して、「俺たちの街が遊び場」をコンセプトとした架空の都市をつくり上げた。
「コンセプトをいかに表現するか、そのうえでMT-125という街乗りバイクがカッコよく駆け抜けていくイメージや、圧倒的な没入感を感じてもらうにはどうすればいいか、をとことん考えました。」
島にはMT-125(非稼働)が展示されていたり、REJECTの人気ストリーマー・くららさんのポスターが貼られていたりと、プレイヤーが楽しめる小ネタが満載。いっぽうで、バイクで走るという行為そのものが気持ちいいことなんだというのも感じてもらいたいと語るKroum さん。レースマップにはカーブを意識的に取り入れ、流れる景色を楽しみながらプレイできるようにしているのだとか。
「裏コンセプトがあるとすれば、“ダークトウキョウ”。東京の街って信号機とか看板とかがたくさんあって、世界の街と比べるとかなり特徴的なんです。よりリアルに見せたいから、すごく地味な作業なんですけど、ひたすらgoogleマップなどで景観を調べまくって(笑)、徹底的にこだわりました。いろんな発見があると思うので、ぜひ細部まで目を凝らして見てほしいですね」
Fortnite 島コード(マップコード)
2449-0709-1912
※これは独立して制作されたフォートナイト クリエイティブのコンテンツであり、Epic Gamesによりスポンサー、支援、または運営されるものではありません。
REJECT初「リアルなモノづくり」への挑戦
そして、コラボプロジェクトのもうひとつの舞台。REJECTデザイナー・塚本凛太郎さんがデザインした、MT-125とヘルメット(ワイズギア・YF-9 ZENITH)のカラーリングコンセプトモデル(非売品)だ。
「REJECTでは、サイトからユニフォーム、イベントなどの展示物、YouTubeのサムネまで、チームに関わるグラフィック全般を手掛けています。今回のバイクやヘルメットのデザインでも、多種多様な部門やチームメイトがいるという、いい意味でのREJECTらしさをカタチにしたいと考えました。
でも、やり始めてから気付いたんですけど、立体物をデザインした経験って、じつは今までなかったんですよね。だから、画面上でデザインしたものの、実際にどう仕上がるかが正直想像できなくて……」
初めての試みをそう振り返る塚本さん。しかし、カスタムメーカーのJK design + products・神保充さんの手により不安は打ち破られ、前代未聞のリアルバイクとヘルメットが見事に誕生した。
REJECTデザインのコンセプトモデル MT-125
「ひと目見た瞬間、おおカッコいい!ってなりましたね。バイクメーカーならやらないアシンメトリックなデザインがしっかりとカタチになり、僕ららしいイメージもちゃんと纏っていますから。非売品なのが惜しいですけど、街中に停まっていたら、絶対見ちゃいますよね?デザイナーとしても、REJECTとしても、ひとつ壁を超えることができたなと思っています」
REJECTとヤマハ発動機による制作の様子や、くららさんの試走レポートはこちらから。
自分の“トキメキ”をもっと言える世の中に
既成概念や過去を打ち破り、ゲーム×リアルという新たな境地を切り開いたコラボプロジェクト。そもそも、輸送機器業界とのコラボ自体が初めてだったと振り返る岩村さんは、別の視点での価値も見出している。
「eスポーツ業界はビジネスとしても注目されていますし、実際、REJECTでもさまざまな取り組みをしてきました。そのいっぽうで、適切なリターンができているのか?という疑問がずっとあったんです。たとえば、コラボ先のロゴを 載せて……それだけで本当に相手や世の中のためになっているのかなと。
今回のプロジェクトでよかったのは、ゲーム好きのプレイヤーがバイクのカッコよさに気付いたり、バイク好きの人がゲームの楽しさに気付いたりするきっかけになったことです。一見すると交わらないような2つの世界がつながって、それぞれに新しい価値を生み出したって、じつはけっこうすごいことだと思うんですよ」
塚本さんが、REJECTのかつてのスローガンを引用して続ける。
「昔、『Not Just A Game 所詮ゲームなんて言わせない。』といっていた時代がありましたけど、僕らはもう次のフェーズに進んでいるんです。ゲームが好きでつくったり競ったりしているチームだけど、それを打ち破って、価値ある仕掛けを届ける存在になるべきだと。今回のコラボで、その可能性をハッキリと感じることができたのはうれしい経験でした」
ゲームとリアルに隔たりはない
今回、制作した島でプレイヤーたちが楽しんでいる様子を見たKroumさんは何を感じたのだろうか。
「eスポーツというと、『どうせゲームでしょ?』と思われる方もまだいらっしゃいます。でも、僕にとっては日常にある当たり前の存在。バーチャルとかリアルとかっていう区別や隔たりはまったくなくて、どちらのモノゴトもひとつの世界、僕の現実で起こっていることなんです。
だから、憧れのクリエイターになって、自分でつくったゲームでどこかの誰かがよろこんでくれるのは、純粋にうれしい。ゲームをきっかけにMT-125に乗りました!という人が現れたら、もう最高ですよね。僕も乗りたくなりましたもん、まず免許を取らなきゃですけど(笑)」
バックグラウンドや役割は違っても、ゲームという共通項でつながり、同じ想いをもつ3人。プロジェクトを振り返った今、お互いをたたえあうと同時に、自分の中にあるトキメキを再認識しているようだった。
「好きとかいいねとか思うような自分だけのトキメキを、もっと自由に言える世の中であってほしいですね。何だっていいし、小さいことだっていいんです。自分はこれだ!っていうモノやコトがあったなら、ちゃんと大事にしてほしい。僕らはそれを見つけたときから、今までずっと大事にし続けているんですよ。そして、今回楽しんでくれたプレイヤーやバイク好きの人たちも、きっと同じはずですよね」
トキメキがあれば、人はきっと幸せになれる。いつでもどこでも、どんなときでも、「俺たちの街が遊び場」だから。
ヤマハ発動機・MT-125の詳細はこちらから。
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/mt-125/