ペダルを踏むたびに広がる趣味と旅。増田翔が見つける、自転車と日常の新しい関係
モデル・増田翔さんは多趣味。登山やトレイルランニング、自転車にカメラ、最近は釣りにも興味津々のよう。一度ハマればとことん探求したい性分で、同じ趣味を持つなら誰もが憧れる体験を重ねてきた。そんな道楽の数々が集約されているのが自転車と話す。一体なにが彼を惹きつけるのだろう。心をくすぐる、自転車の魅力を語ってもらった。
2025.01.24

INDEX
未体験のスピードに心酔。現在まで乗り換えてきた自転車たち
自転車にハマった原体験はいつですか?
高校生の頃、初めて乗ったクロスバイクがきっかけです。最初は自転車に詳しくなかったので、ただ友達よりかっこいいものが欲しいという理由で選びました。でも乗り始めると、風を切る感覚やスピード感がとても気持ちよくて、気づけば乗るのが楽しくなっていました。
最初は見た目やスピードに惹かれたんですね。
そうですね。ママチャリが主流だったので、カゴがない自転車に憧れていました(笑)。見た目がスタイリッシュで、それだけでテンションが上がったんです。遠くまで走るわけじゃなく、ただ嬉しくて近所をぐるぐる回っていました。

その後はどんな自転車に乗り換えましたか?
大学生で上京したタイミングで、変速機が付いていないロードバイクに乗り換えました。シンプルな構造がスタイリッシュでかっこいいんですよ。変速機が付いていないぶん漕ぎ出しは重いけど、スピードが上がると体の一部になるように感じられて、その一体感が最高でした。
もともと体を動かすことは好きでしたか?
いや、どちらかというとインドア派でした。でも、自転車で走る楽しさを知って、体を動かすのがどんどん好きになっていきましたね。

旅の新鮮味を日常に。遠回りの美学とは?
自転車に関する印象深いエピソードはありますか?
大学時代、大宮のキャンパスまで片道40キロを自転車で通学したことがありました。結局、その日の授業には遅刻しましたけど(笑)、自分がこんなに遠くまで行けることに驚きましたね。その道中で見える景色も新鮮で、自然と自転車に乗るのが楽しくなりました。この経験をきっかけに、片道15キロくらいなら無理なく走れるようになり、日常的に自転車を活用していました。残念ながら、その愛車は後に盗まれてしまったんです。
盗まれてしまったんですか!?
はい。だから、しばらく自転車から離れていたのですが、その後、先輩が「乗らなくなったから」と言って譲ってくれたのが、このグラベルロードバイクです。

グラベルロードバイクについて教えてください。
ロードバイクとマウンテンバイクの中間に位置するような、街と山の両方で乗れる自転車です。フレームやフォークに荷物を積むためのダボ穴が空いていて、キャンプ道具やバッグを取り付けることができるんです。譲り受けたときは、アウトドアの可能性が一気に広がるような気がして、とてもワクワクしました。
どんなところに自転車の魅力を感じますか?
登山やロングトレイルのように数日かけて長距離を歩くのが好きなんですが、歩くのにはどうしても限界がありますよね。その点、自転車ならさらに遠くまで行けるし、自由度も高い。最近は、1泊2日で秩父に行ってきました。昼食を食べるために、20キロも遠回りしてみたりして。歩きでは到底無理な距離でも、自転車なら気軽に実現できちゃいます。
旅先ではどのように自転車を楽しんでいますか?
少し前に、キャンプ道具を自転車に積んでツーリングする「バイクパッキング」に初めて挑戦しました。四国を回る3泊4日の旅。雨で予定を変更することもありましたが、峠を越えて絶景を眺めたり、その場で釣竿を買って釣りをしてみたり。行き先も過ごし方も自由に決められる、自転車ならではの気ままな旅がとても楽しかったですね。

最初はスピードに魅了され、今では旅の相棒に。そんな自転車のおすすめポイントは?
自転車は、ただ乗るだけでも気持ちが良くて、心が穏やかになります。さらに、車より早く目的地に着くこともあるんです。それだけでも魅力的ですが、自転車は移動そのものを楽しめるのが一番のポイントだと思います。たとえば、いつも行く場所に向かうときでも、毎回違う道を選ぶようにしています。初めて通る道や街には、独特のワクワク感がありますよね。
少し遠回りをしてみると、知らなかった場所や景色に出会えることも多くて、それが本当に楽しいんです。歩きではなかなかできない“大きな遠回り”ができるのも自転車ならでは。マップに表示される最短距離を走るだけじゃ、つまらない気がして。
確かに、遠回りにはたくさんの魅力がありますね。
旅をするときも、大きい道路より生活道路を通るのが好きです。そういう道でこそ、思いがけない景色や素敵な場所に出会えることが多いです。この前も自転車で知らない道を走っていたら、妻が好きそうなスイーツのお店を発見したり、古着屋を見つけたり。こうした偶然の出会いが日常的に楽しめるのも魅力ですね。

楽しいことより、おもしろいこと。探究心に胸が躍る
自転車が趣味になってから、どんな変化がありましたか?
自転車に乗るようになってから、趣味がどんどん増えました。今では、自転車がそれらの趣味をすべて集約しているように感じます。旅を軸にしながら、いろんな趣味を掛け合わせて楽しむのがスタイルです。
たとえば、どんな趣味が増えましたか?
友達と釣りを始めたのが一つです。また、以前はあまり触っていなかったカメラにも、自転車をきっかけにまたハマりました。カメラとかの趣味道具を持ったとしても、自転車ならそこまで荷物にならないので、登山やロングトレイルより他の趣味を同時に楽しめます。自転車に可能性しか感じません。
今までミシンなんてほとんど触ったことがなかったのに、フレームバッグとサドルバッグは自分で作ってみたりもしましたね。

アクティブなことから、モノづくりまで…素敵ですね。今後、自転車でやってみたいことはありますか?
とにかく、ふらっと気ままに旅をしたいです。四国は行けていない場所が多いからまた行きたいし、佐渡島とか北海道に行ってみたいです。最近、ひとりで秩父に行ったときは、昼前に「そろそろ行こうかな」と軽い気持ちで出発しました。そんな風に、特別な準備や気合いがいらないのが自転車旅のいいところ。自転車があるおかげで、旅そのものがぐっと身近に感じられるようになりました。
また、バイクパッキングはまだ初心者なので、装備を見直して必要最低限のものに絞りつつ、釣竿などの遊び道具も充実させていきたいです。
登山やロングトレイルではウルトラライトスタイルを好んでいると伺いましたが、バイクパッキングでは装備にどんな違いがありますか?
パンクの修理道具が増えますが、基本的には同じです。もともと登山で使うテントや小物のギアが好きだったので、自転車の装備も「ギア」として同じ感覚かな。テントやバッグ、細かいパーツに至るまで、カスタマイズしながら準備する時間が、旅そのものと同じくらいワクワクします。

自転車をきっかけにいろいろと楽しんでいますね。
そうですね。僕が大事にしているのは“おもしろいことをする”ということです。楽しいと思えば、なんでも楽しくなりますよね。その楽しさ以上に、“おもしろい”と感じたことは、さらに夢中になれるものです。自転車は、そんな探究心を刺激してくれる存在ですね。
“おもしろい”と思うと、趣味の沼にどんどんハマっていきそうですね!これから自転車を始めたい人にアドバイスをお願いします。
僕が今おすすめするのは、グラベルロードバイクです。街でも山でも走れる万能な自転車なので、アウトドア好きはもちろん、そうでない人にもおすすめです。カスタマイズできることが多いから、ファッション感覚で自分だけの1台を作れる楽しさも魅力です。
特別な知識や技術がなくても、自転車はすぐに始められる趣味。とにかく乗ってみれば、その楽しさに気づけるはずです。最初は街中をゆっくり走るだけでもいい。自転車は、日常を少し豊かにしてくれる相棒だと思います。

増田翔(ますだ・しょう)
栃木県出身。モデル事務所VELBED.に所属。ファッションブランドの広告やカタログなどで活躍。山を好み、縦走登山やロングトレイルを経験。国内は北アルプスや上高地から親不知までの130キロなど、さまざまな縦走に成功。2023年には、アメリカのパシフィック・クレスト・トレイル4,260キロを踏破した。イギリス発祥の1泊2日の山岳レース、オリジナル・マウンテン・マラソン(OMM)に出場するなど、アウトドアを満喫する。
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