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初めての始まり。

芝居している瞬間は嘘がないように。小西桜子が語る役者としての心構え

2020年に映画『ファンシー』ヒロインで鮮烈なデビューを飾り、同年公開の映画『初恋』で3,000人からヒロインに抜擢されたことで脚光を浴びた俳優・小西桜子。以降映画、ドラマと話題作へのオファーが絶えない彼女が明かす、プレッシャーに打ち克ち、仕事を切り拓くために心がけていること。

INDEX

デビューから三年。輪廻転生を繰り返すヒロインを演じ切った今、役者人生を振り返る

映画『ファンシー』のデビューから早三年。最近はドラマ、映画と次々に出演されていますね。

もう三年も経つんですね、あっという間ですね。今もこうして大好きなお芝居の仕事を続けられていることが、まずはとても嬉しいです。

これまでの出演作を振り返ってみて、いかがですか。

どの作品も印象的で、話そうとするとキリがなくなってしまいますが、いろんな役をやらせていただいていると思います。ただ、いつもどこか少し変わった役の女の子を演じることが多いので、そろそろ明るい、何も抱えていないカラッとした女の子を演じてみたい気持ちもあります(笑)。

少し変わった役柄でいうと、映画『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』(2023年10月27日公開)では、輪廻転生して生まれ変わった女優の卵、舞・とわを演じられていました。

漫画、舞台、そして映画が連動して、平安時代から現代までの千年を描くこうとする『僕らの千年』プロジェクトの映画『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』舞・とわ役として出演させていただきました。千年という時間軸を生き続けるヒロインを演じることは、私にとってすごく大きなチャレンジでした。

どういった面でそう思われましたか。

脚本を読んでまず感じたのは「これまでやったことがない役柄だな」ということ。輪廻転生ってちょっとファンタジーっていうか、現実的ではないじゃないですか。それに、この映画は『僕らの千年プロジェクト』を構成する一部に過ぎません。漫画と舞台が連動するからこそ、映画では描かれてない部分もあります。そういったところを監督やスタッフの皆さんと作り上げていく感覚が楽しみでした。

ファンタジー、恋愛、歴史……複数の要素が入り混じり、どこかコミカルで演劇のようにも感じられる展開が印象的でした。

なので、あまり映画に馴染みがない人とかにも絶妙なバランスかもしれません。千年と聞くと壮大で、自分ごとにしづらい規模だと思うんですが、相手を思う気持ちやどのように愛を伝えていくか、今その瞬間の気持ちを相手に届けることの難しさって今も昔も変わらないんですよね。今を生きる人にとっても、共感できる部分が多い作品だと思います。

しかし実際には千年、生き続けることはできません。役作りをする上で苦労された部分もあったんじゃないでしょうか。

ハッキリとはわからないけど、なんとなく覚えがあるような気がするーー生まれ変わり続ける舞・とわが、前世の記憶を徐々に取り戻していく感覚や感情を表現するのはどうしても難しかったですね。

ヒロインの設定は舞台女優というところで役者同士、自身と重なる部分はありましたか。

私は映像作品に出演することが多いので、舞台女優ならではの苦楽まで完全に理解しているわけではないですが、下積み時代のシーンにはすごく共感しました。バイト先のお客さんに「あなた女優なの?」って聞かれたり、お局に揶揄されたりとか。

同じ経験をされてきたんですね。

はい。私もバイトしながらこのお仕事をしてきたので「売れない女優って思われたくないな」って思いながら頑張っていたときのことを思い出しました。

プレッシャーを乗り越える秘訣は「曖昧な気持ちのまま現場に行かないこと」

小西さんといえば、デビューからまもなく話題作への出演が続いています。プレッシャーを感じることはありませんか。

もちろん、あります。でも、デビューしたての頃は右も左もわからないことばかりだったので……正直プレッシャーを自覚することすらできていなかったと思います。でも当時は「もうやるしかないんだから、自信なくしてる場合じゃない!」って自分を鼓舞させながらやっていたんですけど、現場に入る前に手の震えが止まらないとか、そういうのは全然ありましたね。

どうやってそのプレッシャーに打ち克ち、乗り越えてきたんでしょうか。

作品に対して、曖昧な気持ちを持ったまま現場に行かないっていうのを徹底しています。いただいた本や作品を読み込むのはもちろんですし、参考になりそうな、似たような作品をひたすら見て、気持ちをできるだけ寄せて向かっています。願掛けに近いですね。

役者としてのプライドを感じます。

嘘がないものにしたいっていうのが、ずっとあって。演じる責任を持たなきゃいけないというか。私がこれまで演じてきた役には私は経験したことがなくても、そういう経験を抱えて、そういう経験で苦しんで悩んで生きてきた人が絶対どこかにいるわけで、当事者の方が作品を見る可能性だってあります。これは忘れてはいけないことだと思うんです、演じるものの責任として。当事者の方に本当に共感してもらうためには、小手先でお芝居しても絶対にバレる。だからたとえ私の自己満に過ぎないとしても、絶対にお芝居してる瞬間だけは嘘がないようにっていうのを心がけています。

作り手の熱量に惹かれて観客から演者に。俳優・小西桜子のデビュー前夜

お仕事としてはもちろん、プライベートでもよく映画を観られるそうですね。

はい、邦画洋画ジャンル問わず、いろんな作品を観ますね。最近だとスタジオジブリの新作長編アニメ『君たちはどう生きるか』を観ました。

映画を観始めるようになったのはいつ頃でしょうか。きっかけを教えてください。

高校生のとき、初めて東京の劇場に映画を観に行ったんです。『忘れないと誓ったぼくがいた』という作品をどうしても観たくて。埼玉県出身の私にとって当時、電車を乗り継いで東京の劇場に行くってすごくハードルが高いことだったんですけど、埼玉では上映しないから私が行くしかなくて(笑)。でもそれが、すごく楽しかったんです。

そこからいろんな映画を観るようになっていったんですね。

当時は今ほど配信サービスも充実していなかったので、近所でDVDをレンタルして観るか、どうしても観たい作品は都内まで足を運んで観に行っていました。一回行くと、次の上映作のチラシが置いてあって、そこからまた観たいやつが増えて……の繰り返し。トークショーや舞台挨拶を観に行っていたこともあります。

行動力に溢れていますね。

結構そのときの感情で動いてしまうタイプで、 冷静になると「なんであんなに行動力あったんだろう」と思うことがいっぱいあります(笑)。

もともと演じることにも興味があったんでしょうか。

いえ、それが全く。幼い頃はどちらかというと目立ちたがり屋ではないタイプだったので、私がこの仕事をしていることに驚いている人も多いと思います。それでも続けられているのは、やりたいって思えるのは、一つのものを作り上げていくことに楽しさや喜びを感じるからだと思うんです。

というと?

私が一番最初にカメラの前に立ったのは大学の先輩の作品に出演したことがきっかけなんですが、そのとき皆ほぼ寝ないで作品づくりに没頭していて。全然寝ていないのに「どこから湧いてくるの?」っていうぐらいのエネルギーを注いで作品を作っていて、すごいなと思ったし、その時間が、ただただ楽しかったんです。

たしかに大勢のキャストとスタッフで一つの作品を作り上げていく時間はかけがえのない瞬間ですね。

はい。初めて演技をするときにみんなが楽しそうに作っていたので私も楽しく演技をすることができたし、それが劇場で上映されて、誰かに観てもらう楽しさも感じることもできました。あの時間がなければ今の私はいないと思います。

幾度のプレッシャーと対峙しながらも、俳優としてのキャリアを着実に築いてきた小西さん。三年という月日を経て見出した役者としてのプライドこそ、躍進を支えているといえそう。次回はそんな小西さんの新たなチャレンジや、ときめくものについて聞いてみる。

後編はこちら。
「やらない後悔はしたくない!小西桜子が今、ときめきを感じるもの」

俳優
小西桜子(こにし・さくらこ)

1998年3月29日生まれ。埼玉県出身。応募総数3,000人のオーディションを勝ち抜き、映画『初恋』(2020)のヒロイン役に選ばれ、一躍話題となる。趣味・特技は、水泳、映画鑑賞、絵を描くこと。主な出演作に、『映像研には手を出すな!』 (2020)『猿楽町で会いましょう』(2021)、ドラマ『死にたい夜にかぎって』『ANIMALS‐アニマルズ‐』『スイートモラトリアム』などがある。10月27日公開『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』を控えている。
Instagram:@sakurako_kns

映画『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』
記憶喪失だが、不思議な力を持つ草介(辰巳雄大)。男の傍に寄り添い、全てを知る謎の男・光蔭(浜中文一)。輪廻転生して生まれ変わった女優の卵・舞(小西桜子)。永き時を経て3人が再び出会ってしまったことで、誰もが予想だにしない衝撃のラストを迎える!!

 

10月27日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開
https://bokura1000.jp/movie/

 

出演:辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)、浜中文一、小西桜子、筒井真理子
監督:菊地健雄
脚本:保坂大輔
音楽:吉川慶
主題歌:ふぉ~ゆ~「心つないで」
製作幹事・配給:東映ビデオ
製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
©僕らの千年プロジェクト ©2023映画『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』製作委員会

CREDIT

Photo:Nanako Araie
Interview&Text:Ayuka Moriya
Direction:Hinako Masuyama

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