2025.11.22
最近ふと思い出した。約1年前、初めてのフランス旅行でプロヴァンス地方を訪れた時のこと。かつて多くの画家たちが愛した光の街。その響きだけで胸が高鳴る場所だった。人工的な色彩のひとつひとつにセンスとこだわりを感じた。
なかでも忘れられないのが、マティスが晩年に手がけたロザリオ礼拝堂だ。雨の中丘の上を目指した。観光客もまばらで、礼拝堂の中は静けさに包まれていた。青、黄、緑のステンドグラスが、外の雨の光を受けてやわらかく透けていた。その瞬間、胸の奥がふっと熱くなるような、静かなトキメキを感じた。派手さはないけれど、心の奥に光が差し込むような不思議な感覚だった。
ロザリオ礼拝堂は写真撮影が禁止されていて、残念なことに手元には一枚の写真もない。でもそれが良かったのかもしれない。あの光景は今も頭の中で鮮明に記憶されている。
PROFILE
写真家
野口花梨
1999年、大阪府生まれ。高校から写真を撮り始める。現在はポートレートをメインに、暮らしにまつわる自然風景や動物、料理など幅広いジャンルの撮影を行なっている。2022年3月に個展「あたたかい身体」をギャラリー千年にて、25年5月に個展「コーリーの導き」を229galleryにて開催。
今月の写真
『ペンギンの庭』堀北阿希
2025.11.03
『スリーカード、フォーカード』飯田研人
2025.10.27
『Only my body』Asako Nakamura
2025.10.20
『ミラー』飯田研人
2025.10.10
『秋のはじまり』斉藤知子
2025.09.29
[September]菊池貴大
2025.09.25