今月のイラスト
2025.08.25
『絵を描く理由』天野 寿

昔の絵が出てきた。
小さな紙に、魚やクラゲが描いてある。
これは、祖父と2人で海遊館に行った時に描いたものだ。
当時の私は、物静かな祖父とのお出かけに緊張していた。
絵を描くのは好きだったので、会話に困ったら絵を描こうと、
メモ帳と鉛筆を持っていった。
しかし、海遊館に入ると、そんな心配は一瞬で吹き飛んだ。
暗闇の中青く輝く、見たこともないくらい大きな水槽。
そこで悠々と泳ぐ魚達や、色鮮やかなサンゴは本当に美しかった。
この美しさを少しでも残したくて、メモ帳と鉛筆で、なるべく丁寧
本当はジンベイザメを描きたかったが、難しくてできなかった。
そこで動きの少ないクラゲを沢山描いた。
帰りの電車で、祖父に描いた絵を見せた。
いつも無表情な祖父が口を開けて「これ、描いたの?」と尋ねてき
帰ってから、その絵をアルバムに貼ってくれた。
むず痒くて、嬉しかった。
あれから年月も経ち、祖父も亡くなり、できることも楽しいことも
でもいい絵が描けて、目の前の人が喜んでくれるのがやはり一番嬉
しかし祖父は、真っ当に会社員をしていた人なので、
別に普通の会社員でよかったけどな…と草葉の陰から思っている気