今月のイラスト

2025.08.05

『Tide Pool』天野寿

テレビをつけると、海開きのニュースが流れていた。

夏の海は好きだ。
といっても自発的に企画するほどではなく、誰かに付いて行く程度なのだが。

特に波に揺られながら、水平線に沈む夕日をぼんやり眺めていたりすると
「今日はなんて良い日なんだ…」と満ち足りた気持ちでいっぱいになる。

海の近くに生まれていたらもっと明るい人間になっていたような気すらする、
そうに違いない。あぁ海行きたい。

そんなことを考えながら「海行きたい」と呟くと、
一緒にテレビを見ていた夫が「えぇっ！」と目を丸くしていた。
どうやら海水浴と縁がなさすぎて「海」と「行く」がうまく繋がらなかったらしい。

確かに、海は楽しいけれど不愉快なことも多い。

道は混むし、クラゲもいるし、髪もキシキシするし、日焼けで肌も痛い。
おまけに帰ってからも、しばらく洗濯物を洗う度に砂が出てくる。

でも不愉快さを乗り越えて、海で得る喜びはこの上ないものがある。だから海に行こう。
そう伝えてみたところ「３ヶ月前位から予定していれば…」とやんわり断られた。

そろそろ「連れていってもらう側」から「連れていく側」にシフトしないと、
海には当分行けそうにないのかもしれない。