今月のイラスト
2025.07.07
『祝福』入夏七海

『ときめきメモリアルGirl's side 2nd kiss』に登場するキャラクター、若王子貴文という先生の台詞に、「今見ている夕焼けや海の色、僕が素敵だと思えるすべてが、僕へのプレゼントだって。そういうプレゼントをもらうたびに、僕は世界から歓迎されてるってわかる。大丈夫だってね。」というものがある。 これは心を閉ざしてしまった不登校の生徒にかけた言葉で、私はこの言葉にすごく元気づけられてきた。
大学時代住んでいた近所の家の庭は、季節が変わるごとに色とりどりの花を咲かせて、それはとても見ものだった。特に初夏頃に咲くうす紫色のあやめがお気に入りで、庭の前を通るたび、また今年も夏がやってきたんだと明るい気持ちになった。
不安定な世の中で未来に希望が持てず、過去に見たおだやかな光景に希望を見出して描いた。このときは社会人になりたてで特に苦しく、この先も絵を描き続けられるのかという葛藤があった。そんなときに考えたのは、あの家の庭のこと。 私は世界から歓迎されている。プレゼントをもらっている。だから、大丈夫。
引っ越してしまったけれど、今年もちょうど今ごろ、見事な花を咲かせていることだろう。