臨床工学技士からデザイナーへ。一から仕立てた服が、旅をはじめる
[profile]
name:石川 恭寛
occupation: TAKAHIRO ISHIKAWA デザイナー
Instagram: @takahiroishikawa_official
[outfit details]
T-shirt/pants:TAKAHIRO ISHIKAWA
shoes:REPRODUCTION OF FOUND
bag:SLOW
2025.06.28

INDEX
Q1.トキメキが発動していることは?
自分のブランド「TAKAHIRO ISHIKAWA」では、型紙・裁断・縫製まで、すべての工程をひとりで手がけています。ときめきを感じるのは、平面だった生地が立体的な服へと仕上がっていく瞬間。裁断したパーツを縫い合わせていくうちに少しずつ表情が現れ、想像以上に良い仕上がりになると、服づくりの面白さをあらためて実感します。
他にも、小さなトキメキは日常のなかにたくさんあります。太めの糸が一発で針に通ったとき。気を使って縫うポケットがきれいに仕上がったとき。喫茶店やカフェでコーヒーを飲みながら、次の服のことをぼんやり考えている時間も、ふと気持ちが上がるような感覚があります。
撮影用の衣装としてリースされることもあれば、誰かの日常に溶け込む一着として着られることもあります。自分のつくった服が、知らない場所を旅していると思うと、それだけでワクワクします。旅するように誰かのもとへ届いて、その人らしさをそっと引き立ててくれる。そんな「ありそうでなかった服」を、これからもつくっていきたいです。
Q2.きっかけは?
服に興味を持ったのは、大学時代。医療系の大学に通っていた頃、たまたまテレビで又吉さんが古着屋を巡っているロケ番組を観たのがきっかけでした。面白い世界に衝撃を受けて、古着に夢中になり、やがてデザイナーズブランドにも興味が広がっていきました。
ちょうどその頃、美術館のグッズを制作・販売する会社でアルバイトもしていて。周りは芸術や建築を学ぶ人ばかりで、違う分野の刺激を日々受けていました。ものづくりに関わるなかで、「当たり前だけど、物って誰かが作っているんだ」とふと気づいて。作り手の思いや努力を感じるようになったこの経験は、今の服づくりにもつながっていると思います。
国家資格を取得して臨床工学技士として病院に勤めたものの、やっぱり「自分は何かをつくることがしたい」と思い、服づくりの道へ。文化服装学院で学び直し、卒業後はブランドでパタンナーとして勤務。2023年に、自身のブランド「TAKAHIRO ISHIKAWA」を立ち上げました。

Q3.これからやってみたいことは?
今年の目標は、展示会を開くこと。これまではすべて自分ひとりで仕立てて、受注というかたちで届けてきましたが、展示会をきっかけに、服が誰かの目に触れる機会をもっと増やしていきたいと考えています。
会場では、これまでにつくってきたアイテムも並べながら、新作もまとめてお披露目する予定です。最初のサンプルは自分で縫い、そこからは量産にも少しずつ挑戦していけたらと思っています。誰かの手に届くきっかけを、もっと増やしていきたい──そんな次のステップに、今ワクワクしています。
