今月の写真
2025.06.24
『いまふれている、その肌の熱』林将平

こうして手紙を書いているけれど、これは果たしてきみの元に届くのだろうか。
無事に、あの青い惑星にたどりついたよ。
強い衝撃を覚悟していたんだけど、わたげみたいにふわふわと着陸したんだ。
ぼくたちの星の技術に、すこしは感謝しなきゃね。
いつも文句ばかり言ってるからさ。
ぼくたちの短い寿命は、あのくすんだ空気のせいなんだって。
この星なら焦らなくてもいいみたいだ。
(ただし、花粉症とやらで心配になるほどくしゃみをしている人はよく見かける。
あの様子じゃ、こっちの寿命だって安心できないね。)
それに、ここの景色はとにかく鮮やかなんだ。
この星で描く絵なら、パレットにぜんぶの絵の具を出したとしても余ったりしないと思う。
青、黄、赤、紫、藍。
空がこんなに表情を変えるなんて信じられるかい?
ぼくたちの絵の具なんて、灰色ばかりが無くなっていくのに。
ああ、そうだ。
「どこか遠くへ飛んでいけたらな」って、よくきみはつぶやいていたね。
でも、この星には本当に空を飛ぶ生き物がいるんだ。
だから、残念ながら欲張りなきみがこの大空を独り占めすることはできない。
でもひとりになることもないから、たぶん、きみにはそっちのほうがいいんじゃないかな。
それにせっかくだったら、ぼくも一緒に。
走るのは速いほうだし。関係があるかはわからないけど。
動物たちと一緒に暮らしている人だっているんだよ。
その手でなでることもできるのに、たまに頬でふれようとする。
動物と暮らす気持ちっていうのはあまりわからないけれど、
好きなものにそうしてしまう気持ち、ぼくにもわかるな。
あの時のきみの肌よりあついものはない気がする。
いつものカメラで撮った写真も添えておきます。
きみが写っていたらもっといいんだけど。
手紙、また書くね。



