今月の写真
2025.04.22
『貌をなぞる』横浪響

東京を離れ、仕事で京都を訪れた帰り、久しぶりに弟に会った。
高校を卒業して家を出て以来、彼はひとりで暮らしている。
実家では部屋を持たず、リビングで過ごすのが当たり前だった彼が、
今は自分だけの部屋で、自分のペースで暮らしていた。
乱雑に置かれた本や洗濯物が、今の彼には不思議とよく似合っていた。
鴨川沿いを歩いていると、人々が談笑したり、お酒を飲んだり、音楽を流して踊っていたり、それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
彼と並んで歩く姿も、気づけばその風景の一部みたいだった。
カメラを向けると、少し照れたようにこちらを見て、何も言わずに立っていた。
私は、ただ静かに、ゆっくりとシャッターを切った。








