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初めての始まり。

ハカセが語るスケートボードの魅力。“誰もが自由で、すべてが自分次第”の大人ならではの楽しみ方

スケートカルチャーから派生したファッション、オリンピック競技など、注目を集める「スケートボード」。スケートコミュニティ<Diaspora Skateboards>のライダーで、2020年には長野県松本市に<canola skateshop>をオープン。「若い子たちにスケートボードをきっかけとしたカルチャーに触れてもらえる機会を作りたい」と語るハカセこと小林俊太さん。地方からスケートボードシーンを盛り上げる彼に、スケートボードとの出会いやその魅力、これからについてお話を聞いた。

INDEX

できるようになる感覚が楽しい。スケートボードとの出会い

スケートボードを始めたきっかけを教えてください。

中学2年生の終わり頃、近くに住んでいる高校生のいとこがスケートボードをやっていたので、僕も自然と始めました。部活を引退し、なんか新しいことをしたいなと思っているタイミングでしたね。

最初に乗ってみて、どうでしたか?

難しいなと思いましたが、元々簡単にはできないだろうと想像していました。時々いとこに教えてもらいつつ、一人で練習を続ける中で、できないことがちょっとずつできるようになる感覚が楽しかったです。

始めた当初、周りにいた同じ歳の子は誰もやっていなかったんですが、僕がスケボーをやっていることを知り「俺もやる」みたいな感じで始め、その後は4人ぐらいで一緒に滑っていました。部活に代わる夢中になれることを見つけたという感じでした。そのときの友達とは、別々の高校に進んでからも、なんだかんだ集まって一緒に練習していましたね。

一緒にスケートボードに夢中になれる仲間ができたんですね。練習先でも出会いはありましたか?

今でこそオリンピックなどの影響でスケートボードを始める子どもが増えましたが、約20年前は中学生とか高校1年生の僕らがかなり若い方でした。

そこで滑ってた人たちは、20代半ばのイケイケなお兄ちゃんたちって感じで。かっこいいなと憧れつつ、ちょっとビビりながら、同じ場所で練習していましたね。いきなり仲良くはしてくれないんですけど、今となってはそれが良かったなと思っています。

というと?

子どもながらに、ここで先輩たちにビビって行かなくなると、上手くなれないなと思ったので、毎週絶対行ったんですよ。1年以上通っていると少しずつ上手くなり、技ができたときには反応してくれるようになりました。

よく覚えているのは、いつもと違う練習スポットに行ったら、いつもの場所で会うお兄さんがいて、「ハカセじゃん」と話しかけられたことです。内輪で勝手に「ハカセ」と呼んでいたらしく、それをきっかけに話すようになりました。当時はスケボーを初めて約2年経ち、それなりに自信も出てきたころ、交流が増えていきました。

そういう先輩たちにいかに認めてもらえるかは、そのころのモチベーションの一つでした。今でもその先輩たちと繋がっていて、お店のオープン準備も手伝ってくれました。応援してくれることがうれしいですね。

常に新しいことを求めて。衝撃的な出会いと熱量が上がる瞬間

スケートボード熱が高まった瞬間があれば教えてください。

松本で開催されるスケートボードやBMXなどの合同大会を観に行ったことです。他の地域から来た同じ歳くらいの上手い子たちを目にして、こんな人たちがいたんだ!と衝撃的でした。

学校の友達は自分より後に始めたので、自分の方ができる環境にいましたが、大会に出ている子達と比べると、自分はまだまだできない方だったんです。結構ショックを受けましたが、同時に大きな刺激になり、もっと上手くなりたいと思ったんです。

ショックより上手くなりたい気持ちが上回ったんですね。

確かな自信を持つ前に鼻をへし折られたので、必要以上に自分を過信しないでいられたことも良かったなと思います。その後も上手い人にたくさん出会って、悔しいことはめっちゃありましたが、辞めたいと思ったことも怪我以外で休んだこともないです。

ずっと続けてこられた原動力は何ですか?

やっぱり、楽しいからですね。何事も楽しくないと続かないじゃないですか。

スケボーのレベルが高い神奈川に大学があったので、大学に行ってからも衝撃の連続でしたが、やり続けていればこういう風になれるんだな、まだ上を目指せるなと思いました。その上手い人たちも、結局続けてきたからだと思うので、なるべく難しく考えず、ポジティブにやるように心がけてましたね。

すべてが自分次第。大人ならではの楽しみ方

ハカセさんが感じる、スケートボードの魅力を教えてください。

日本全国どこでもできることが一番の魅力です。毎日同じでは面白くないし、常に新しいことをしたいので、スケボーは本当に飽きないです。

たとえば、今いる松本市スケートパークにあるアイテムと、別の施設にあるアイテムは角度や長さなどの条件が違うので、同じ技でもできなくなることがあります。自分の技が完璧じゃない証拠なので、弱点をさらに磨いてどこでもできるようにしていくことが面白いんです。

弱点さえも面白がれると楽しく続けていけそうですね。他にも魅力を感じる部分はありますか?

子どもは親がパークに連れて行かなきゃいけないけど、高校生や大学生になると、電車に乗って自分で行き先を選択できるようになるじゃないですか。最近はスケートパークも増えているので、いつもと違うパークに行ってみるなど、行動範囲を広げられることが大人ならではのスケートボードの楽しみ方だと思います。

何時間も運転して初めての場所に行き、スケートボードをしたり、その土地の美味しいものを食べたり、スケートボードをきっかけに旅している時間は最高ですね。

楽しそうです!その自由さに惹かれる人も多いのかなと思います。

学生なら甲子園に行きたいとか目標に向かって頑張ることはもちろん素晴らしいことだけど、誰もが大きな目標があるとは限らないじゃないですか。スケートボードは、どこで、どんな技を、どういう風にやりたいかをすべて自分で決められます。大きな目標がなくてもずっと面白いんです。

僕の時代は、これはダメと縛られるなんて面白くないなと思ってきた子たちが、自由を求めてスケートボードを選ぶことが多かったんです。最近はファッションや競技をきっかけに始める人の方が多いと思いますが、結果的に誰もが自由を感じられるコトになっているのかなと思います。

年齢も性別も関係ない。スケートボード入門

最近はメディアで特集が組まれるなど、興味を持つ人が多いと思います。これから始める人がいたら、どんな声をかけますか?

ある程度上手くなってからスケートパークに行こうと考えてる人が多いと思いますが、最低限乗れるようになったら、 スケートパークにガンガン行った方がすぐに上達すると思います。

上手い人たちが多い場所だと、気負いしちゃう人もいそうですよね…。

譲り合って施設を利用すれば、上手いかどうかは関係ないですね。みんな最初はできないし、上手い人たちも自分ができなかったときのことを鮮明に覚えているから。僕は人に対して下手だなという気持ちは一切ないです。

スケーターはいろんな人がいて、ちょっと見た目が怖くても、不器用で優しい人が多い気がします。最初から声をかけることは少ないですが、何度も通って一生懸命練習し続けていると徐々に優しくしてくれるし、教えてくれたりもします。僕もそういう先輩がすごい多かったし、先輩たちに認めてもらえるとうれしくてまたがんばったり、いい循環のなかで滑っていましたね。

そう聞くと背中を押される人がいると思います。

切磋琢磨できる人がいると、より上達すると思います。技をしなくても、乗っているだけで楽しいんですけどね。

学校や職場などの同じコミュニティでスケボーをしているのは自分だけなんてこと、多分当たり前だと思います。そういう人たちがスケートパークに集まっているから、面白いですよ。

学生も、定年後にスケボーを始めたおじいちゃんも、年齢や性別関係なく、同じ場所で一緒にできることって、あんまり他にないのかもしれないなと思います。

地方からスケートボードを盛り上げたい。モチベーションの源

東京から長野県松本に拠点を移し、canola skateshopを始めたきっかけを教えてください。

本当はずっと東京でスケボーしたかったんですが、2人目の子どもが生まれたときに、奥さんが病気で亡くなってしまったんです。東京で誰のサポートもなく子ども2人を育てることは無理だと思い、長野に帰ることにしました。

自分が長野でできることを現実的に考えたら、スケートショップしか思いつかなくて。30歳のときだったので、失敗しても仕事はいくらでもあるし、今しかできないことをしようと思ったんです。

不安もあったと思うのですが、どのように準備を進められたんですか?

東京のスケートショップで働いていたので、取引先のブランドに「長野でスケボーショップをやるので、卸してくれませんか?」とコンタクトを取りました。これなら長野で勝負できる、生活ができるという道を確保することから始めましたね。

行動力に感服します。

なんとかしようと必死でしたね。僕のことを「ハカセ」と呼んでくれたお兄さんたちもオープン準備を手伝ってくれて、最終的に家族も理解して子育てをサポートしてくれました。最初は親父にもっとよく考えろと言われていましたが、タイミング的にもう今しかないなと思ったんです。

東京ではスケボーのDVDを出して活発に活動している時期だったので、もし期間が空いたら、僕のことを覚えてくれる人がいないかもしれないと思ったんです。だから、即行やろう!と踏み切りました。

実際にお店をオープンしてからは、どうでしたか?

正直、最初はマジで東京に帰りたいと思いました。でも今は、地方からスケートボードを盛り上げ、若い子たちにスケートボードをきっかけとしたいろんなカルチャーに触れてもらえる機会を作りたいという新たなモチベーションができたので、楽しくやっています。

最近は、東京やローカルで繋がった人たちが、松本まで遊びに来てくれる機会が増えました。地元のスケーターと一緒に滑るとお互い刺激になるし、レベルが上がるきっかけにもなります。

松本の街も盛り上がりそうです!

まさにそうですね。僕の店を目的に来た人も、せっかくなら美味しいご飯が食べたい、松本城を見たいと、長野県ならではのことを楽しんでくれます。スケボーだけではなく、結果的に自分が生まれ育った場所に対して勝手に還元してるつもりです(笑)。

素敵な還元ですね。スケートボードを盛り上げるため、他にどんなことをされているんですか?

ジャムセッションという全員が同時に自由に滑る形で、盛り上げたやつが優勝という大会を開催しています。

技の難易度に限らないので、初心者の子が想像以上に上手くできたら盛り上がったり、ギャグ路線の人もいたり、客席に飴を投げながら滑る子がいたり、あまり順位にこだわらない感じです。

僕が先輩たちにしてもらったように、適度な距離感でサポートできればうれしいです。時間はかかると思いますが、地元からスケートボードを盛り上げ、その結果スケートボードをしない人たちにも少しずつ理解が広がるといいなと思います。

ハカセ

長野県出身。Diaspora Skateboardsのメンバー。あだ名のhakaseは、詳しい方の博士ではなく、ひょっこりひょうたん島の同名キャラクターが由来。2020年4月に松本にて自身のスケートショップ・canola skateshopをオープン。

Instagram:hakase_dsp

撮影場所:エア・ウォーターアリーナ松本 松本スケートパーク

※スケートボードは、法律や各施設のルールに従い、近隣に迷惑をかけないかたちで楽しむことを推奨します。

CREDIT

photo:Kyohei Hattori

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HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

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わたしたちを素敵な未来へ導く"トキメキの発動"にフォーカスし、その原動力を探求、発信しています。


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