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初めての始まり。

「ななすけの散歩録」一周年。散歩中に出会う魅惑の“暗渠”と予期せぬ発見

さまざまな土地を散歩しながら、街の歴史やお店を紹介するYouTubeチャンネル「ななすけの散歩録」で、お茶の間に平和で新しい風を吹かせている映像クリエイターのななすけさん。チャンネルを開設して一年、独特なナレーションと編集が癖になり、散歩の奥深さに共鳴するファンを増やし続ける彼女が、散歩に目覚めたルーツや魅力についてお話を聞いた。

INDEX

散歩録を始めたきっかけと、散歩に目覚めたルーツ

「ななすけの散歩録(以下、散歩録)」を始めたきっかけを教えてください。

前の仕事を辞めたタイミングで、特にやりたいことがなくてダラダラしていた空白期間がありました。そろそろ仕事をしなきゃと思っていたとき、友人(散歩録にも時折登場するポーさん)から朝4時に「活動家になりませんか?」と連絡が来たんです。酔っぱらってるのかなと思いつつ、よく分からないけど「なります」と返しました。

何の活動家なのかを聞くと、Youtubeということでした。もともと、Youtubeの動画を作ってみたいなとぼんやり思っていたので、これを機にやってみようと思ったことがきっかけです。

動画の内容はどのように決めたのでしょうか?

私もその友人も元々散歩が好きだったので、実際に散歩しながら詰めていきました。最初は軽めのノリだったんですけど、話していくうちに、これを本当にやってみたらそれなりに面白いものができるんじゃないか?と。話し合いを重ねて実際に作ってみて、こうした方が面白いかも、こういう表現は良くないかもと擦り合わせをしながら、なんとか編集して中野編を出しました。

本日の撮影も一本目と同じく中野ですね。散歩自体を楽しむようになったのはいつからですか?

私は小さい頃からじっとしてられない子だったので、もう常に歩き回っていました。夜の散歩が特に好きなんですけど、意識的に夜に散歩をするようになったのは中学生の頃です。

近所に荒川が通っていたので、 友達とみんなで集まって荒川沿いを歩くという謎の会があって。歩いていると取水塔や水門に出会すので、「これは何?」と当時も気になっていた記憶があります。

すでに視点が独特ですね。みんなでそういう話をされていたんですか?

私が勝手に言ってるだけで、「またなんか言ってるよ」とみんなには特に相手にさせてなかったです。私は、1回気になったものを調べないと気が済まない性格だったので、当時から気になることをよく調べていました。

散歩録で、“暗渠(あんきょ)”という「川の水質悪化や水質悪化による悪臭を防ぐため、または通路を作るためなど、さまざまな理由によって地下化された河川や水路」を度々紹介しています。今振り返ってみると、暗渠に興味を持ったきっかけは、中学時代の荒川散歩かもしれません。

ななすけさんの散歩ルーツの一つと言えそうですね。古くからある場所やお店の紹介もされていますが、古いものにも興味があったのでしょうか?

先のことを予想することが少し苦手ということもありますが、人がどう生活をしながら歩んできたか、これまでの歩みを振り返ることはずっと好きだった気がします。

魅惑の“暗渠”。散歩の醍醐味は予期せぬ小さな発見

日々散歩を楽しまれているかと思いますが、何か深くハマった瞬間やきっかけはありますか?

先ほどもお話した暗渠の存在を意識するようになってから、より散歩が好きになりました。街を歩く中で、「これって暗渠かな?」というサインを見つけるとテンションが上がります。下調べをしていても楽しいですが、知らない土地に行き、暗渠だと予測した場所の先に川を見つけるなど、答えが見つかると嬉しいです。

具体的に暗渠のサインはどのようなものがあるのでしょうか?

コインランドリーや銭湯などの水を大量に使う場所があったり、ポンプが見えていたり、道の耐久性が低いので車が通れないようにされていたり、橋跡が見えたり、いろいろあります。そういう暗渠サインを見つけた瞬間が、散歩をしていて面白い瞬間です。

ななすけの散歩録」を拝見するまで意識したことがなかったのですが、奥深いですね。

私自身、暗渠自体は知っていましたが、散歩録を始めるまでは「ここは多分川沿いなのかな」程度の認識だったので、奥深さに驚きました。今もすごく詳しいわけではないので、その都度調べながらですね。

暗渠に限らず、街の歴史や特徴などについて、情報の深さとスッと入ってくる分かりやすさのバランスが絶妙だなと感じます。散歩録の前にどの程度情報を調べるのでしょうか?

めちゃくちゃ調べて、基本的に一式台本を作ってから撮影に行きます。地名の由来と、大体戦後からの流れを調べるテンプレートが自分の中にあるので、それを元にひたすら調べます。ネットやTwitter(X)で町の名前を検索して知識を見つけたら、そのソースを図書館で調べることが多いです。

徹底的に調べられてるんですね。撮影に行ってから追加したい情報などが出てくることはありませんか?

しょっちゅうあるので、1本の動画を作るために3回は街に足を運んでいます。最初は1回目に撮った素材だけで作ろうとしていましたが、この場所は晴れた日に撮り直したい、違う時間帯に撮りたいなど凝り始めてしまい、結果満足行くまで足を運ぶスタンスになってます。

こだわる姿勢が素敵です。

今の時代、たいていの情報はネットで調べると出てくると思いますが、それを専門的すぎず、面白おかしく、みんなが気軽な気持ちで見て「へ〜」と思えるようなバランスを意識しています。

視聴者にも伝わっている部分だと思います。散歩録の制作過程の中で、1番楽しい瞬間はどんなときですか?

どれだけ事前に調べていても、実際に街を歩いてみると、予期せぬ張り紙や不思議な犬がいたり、思わぬアクシデントがあったり、台本にないことが絶対に起きます。それらをうまく映像に収めることができた瞬間が、1番楽しいですね。

最近予想できなかったことや、思わぬ出来事はなにかありましたか?

代官山編を撮影中、道に換毛期の柴犬の毛が大量に落ちていて、「なんだこれは。まだ近くに柴犬が居る」と思いました。そういう予期せぬ小さな発見がいっぱいあることが、散歩の醍醐味です。

散歩録を撮るときも、普段散歩しているときも、共通する面白い部分だなと思います。

予期せぬ出会いに惹かれる一方で、暗渠のように意識的に見てしまうポイントが他にあれば教えてください。

昔の看板を見つけると、思わず立ち止まって見てしまいますね。手書きの看板もそうですが、昔のアクリル看板は職人さんが手で文字を切っているので、じっくり見てみるとちょっとズレていて、手作業ならではの味を感じられます。

他には、街中のガードレールにはその区の花や葉のデザインが施されていることが多いので見ていたり、街で過ごしている人の違いも結構面白いです。夜だと、人の酔っ払い方に違いがあることも興味深いですね。

「ななすけの散歩録」一周年。思い出深い街とこれから

今月で散歩録が一周年を迎えられましたが、視聴者からどんなリアクションを貰うと嬉しいですか?

散歩録を見てから実際に足を運んでみたという声は、やっぱり嬉しいですね。また、家族でご飯食べながら見てます、夫婦で見てますと言ってもらえることが増えたことも嬉しいです。

私はTV番組の「出没!アド街ック天国」が大好きで、アド街や相席食堂はご飯中に見るのにちょうどいいなと思っています。散歩録も、ご飯を食べながら気軽に見られるようなものが作りたいと思っていたんです。

「今度ここ行ってみたいね」という会話が生まれている気がします。シャドーボクシング、犬、珍風景など、動画内で少しツッコミたくなるポイントがあることも、ご飯のお供にぴったりな魅力だと思います。

面白おかしく見られるように、ツッコミどころは入れ込むようにしています。TVやYoutube番組ではお馴染みの挨拶やノリみたいなものがあるので、そういうキャッチーで見やすい要素もなるべく入れていますね。

めちゃめちゃ地味ですが…実際一人で美味しいものを食べたときに頭に浮かぶのは「お見事・あっぱれ・美味い」というストレートな感想なので、詳しい食レポはせず、一言レポも定番になってきました。

独特の表現と空気感が癖になっている人が多いと思います。散歩録で登場する街は、どのように選んでいますか?

最初は自分が好きな街から始めましたが、今は好き嫌いせずに幅広く取り上げていこうと思っています。自分的に実はあまり得意ではない街もありますが、いざ知ってみると意外な発見が多くて好きになれることもあります。

実際に知ってみて、印象が変わった街はありますか?

散歩録の本編では撮っていませんが、私は渋谷が特に好きではなかったんです。でも、渋谷百軒店(しぶやひゃっけんだな)の歴史を知ったり、地形の成り立ちを知ってから面白いなと思うようになりました。 坂や階段が多く、中心都市には向いてないはずの渋谷ですが、どこかダンジョンっぽい感じがあり、その不便さがむしろ若い人を惹きつけているのかなと思ったりしています。

渋谷編、ぜひ見たいです。これまでの動画の中で、特に思い出深い街はどこですか?

全部思い出深いな……!でも、1番大変で頑張ったなと思うのは、港区の六本木・麻布十番編ですね。多分6回は足を運びました。カメラマンを雇えるわけではないので、毎回別の友達に撮影してもらったこともあり、撮影も含めて思い出深いです。

六本木・麻布十番はギラギラしているイメージで苦手意識があり、あまり馴染みがなかったので、散歩録でどう撮るか悩みました。でも、何度も足を運んでいると街に慣れてきて魅力が分かるようになったので、最終的にはなんとかまとめられたかなと思います。

私も近いイメージを持っていたので、ほっとする昔ながらの素敵なお店がたくさんあることも発見でした。散歩録で、これからやってみたいことや考えていることがあれば教えてください。

今は東京、埼玉、千葉ぐらいのエリアだけですが、関西、北海道、沖縄など、47都道府県全部行けたらいいなと思います。

今は撮影を友人に手伝ってもらいながら、企画・動画編集・イラストなどは一人でしているのですが、全国を巡る規模になった頃には、チームで作ってるかもしれないですね。全都道府県に行くことを目標に、散歩も散歩録も続けていきたいと思います。

散歩に目覚めたルーツや、暗渠をはじめとする散歩の魅力を語ってくれたななすけさん。街の知られざる歴史や新しい一面を知ることで、いつもの街でも発見があったり、縁がなかった街と距離が縮まったりすることがある。「ななすけの散歩録」が散歩好きな人たちへ広がり愛されているのは、気づきがある内容や独特の空気感はもちろん、動画の節々から彼女の散歩愛が伝わってくるからかもしれない。

次はどこを散歩しよう?ななすけさんを見ていると、思わず足取りが軽くなり、散歩欲が高まってくる。

お散歩映像クリエイター
ななすけ

東京都出身。 YouTubeチャンネル「ななすけの散歩録」を通して散歩の奥深さや街の歴史を届けるお散歩映像クリエイター。 端正なビジュアルとは対照的なハスキーボイスの持ち主であり、ファッションモデルなどもこなす傍ら文学などにも造詣が深く、マルチクリエイターとしても今注目を集めている。

 

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撮影協力:
古着屋 ロビンソン(@robinson_robinson_robinson
カフェ calmside(@calmside_tokyo

CREDIT

photo:Gyo Terauchi
hair&make:Kotomi Goshima

SHERE

instagram

PROFILE

HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

“トキメキ”発動中

HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

わたしたちを素敵な未来へ導く"トキメキの発動"にフォーカスし、その原動力を探求、発信しています。


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