連載|すこし、遠回りをしていくから
2024.08.06
vol.19 - 思い出せない写真について -〈勝呂亮伍〉
現像から帰ってきた写真たちを眺める。
今まで、どの写真でもどこで撮ったのか、どういった状況で撮ったのかを、上がってきた写真を見たらすぐに思い出すことができていた。
しかし今回、現像に出した20本近くのうちの1本、そのうちの前半の数枚だけ、まったくなにも思い出せないままでいる。
とても不思議な感覚を味わっている。
確かに、それらは私が撮った写真であるのに、大切なはずの記憶がすべて抜け落ちてしまい、まるで誰かの記憶が私のなかに入り込んでいるような。
少し違うかもしれない。
誰かに身体を乗っ取られて、ここにある数枚だけ写真を撮ってもらっているような、そういう感覚に近い。
面白いのは、撮った記憶のないこの写真たちを、私は構図や惹かれる対象から「私の写真」だと感じているところにあると思う。
過去の連載でしていた「身体が覚えている」という感覚に近いのかもしれない。