今月のイラスト
2024.07.08
『長崎に響く靴音』〈東京メロンボーイ〉
長崎の街では、路面電車が走りつづけている。
友人と長崎を訪れたときのことだ。
宿に向かう道すがら、僕たちは迷子になっていた。
路面電車の停留所というものはあちこちに存在していて、
しばらくすると、
外交的な友人が臆することなく声をかけてみるが、
考えてみると、
自分の住んでいる街でも、意外とわからないことがあるものだ。
丁重にお礼を言い、心を決めて再び僕たちは歩き出す。
アスファルトに敷かれたレールをぼんやり眺めていると、
振り返ると先ほどの二人組が立っている。
もしかしたらこれじゃないですか、とスマホを差し出す。
どうやらわざわざ調べてくれたらしい。
その地に生きている人の純粋なやさしさに触れた気がして、
遠ざかる靴音を聞きながら、二度と出会わない二人のことを、