連載|すこし、遠回りをしていくから
2024.06.18
vol.17 - 歩くのが遅いからさ -〈勝呂亮伍〉
最近は「スナップへの興味」みたいなものが少なくなってきた。と、いうよりもそういうものを撮る時期ではないのかもしれない。
理由はいくつか考えられるが、個展を開催したことが自分のなかでのひとつの節目になったのだと思う。
あれから外へ写真を撮りに街へと出歩いても、数枚しかシャッターを切れずに帰ってきてしまう、ということが増えた。
無理に撮ることもできるのだろうけど、それは私が大切にしていたいものとは違う気がする。ので、しばらくは「撮れない」ということをそのままにしておこうと思う。
「それをそのままにしておく」ということができるようになったのは、自分のなかで少しの成長なのかもしれない。
スナップ写真への意欲は少しずつ薄れていっているかわりに、最近は人を撮りたいという感覚が増してきている。
少し前の自分にはなかった感覚で、こういう感覚が芽生えてくるのは、展示後の醍醐味なのだろうと感じている。
現像から帰ってきた写真たちを見返して、人が写っているものをいくつか探す。
ちゃんと人が写っているな、と思うものは友人たちから稀に頼まれる家族写真たちで、とてもパーソナルな仕事でどこかに公開することはないのだけど、それがとても美しいな、と思っている。定期的に続いていけば嬉しい。
あとは、友人たちと遊んだときの写真がいくつかあって、大抵は歩いているときに後ろから撮ったものばかりで、私は人の背中を好んでいることに気付かされる。
自分がなにを好んで生きているのか、写真は残酷なまでに確実に伝えてくれる。
それによって、たまに嫌になってしまうけれど、やはり私には写真が必要で、残していくことで変わっていく自分のいくつかを今は楽しみにしている。