連載|すこし、遠回りをしていくから
2024.04.22
vol.15 -白い記憶-〈勝呂亮伍〉
とても清々しい朝だった。
昨日までの仄暗い日々がまるで嘘のように。
だから、少し散歩をすることにした。
すぐ近くの、いつもとは違う方向へ。
建ち並ぶ家々の隙間、その奥に、古びたポストが植えてあるのをみた。
庭先に植えてある、ひとつの赤い古びたポスト。
それは、設置されているというよりも確実に植えてあった。
庭先に広がる名前もわからない花や木々たちと並列に。
瞬間、冷たく短い風が、目の前の景色をさらっていく。
浮いたような不思議な感覚だけを残して。
桜が舞う。
今年も春がやってきた。