連載|すこし、遠回りをしていくから
2024.01.22
vol.10 - 祖母とためらい -〈勝呂亮伍〉
今年は元旦に親戚の集まりがなかった。
なので、展示のための額縁を制作する折に、祖母に会いに行った。
去年、米寿を迎えた祖母は少しだけ呆けてきていて何度か同じ話をする。繰り返される会話は最近のことばかりで、私は祖母の過去を何も知らないままに、すっかり大人になってしまった。
私が実家から来たのか/東京から来たのかとか、明日の何時にどこへ帰るのか、そんな大して重要じゃない話をたくさんして、本当にしたい話は、またの機会にお預けになってしまう。
すこし悔しさを感じながら、犬をこねくり回す。犬はいつだって、ずっと可愛い。
あなたはどこで生まれ、どう過ごしたのか。
祖父とはどこで出会い、なぜ結婚したのか。
私はあなたの人生が気になっているのです、と心のなかで想う。
今年こそはあなたの住む街で写真展がしたいと、そう想うのです。