今月のイラスト
2023.11.27
デイドリーム・バカンス『ミュージアムで見た馬』〈カチナツミ〉
がらんとした空間に大きな窓があった。
そこは昔ミュージアムだった場所で今は建物と大きな庭だけが残っており、もう何万年も前の遺跡のようであり出来たばかりの新しい建物のようでもあった。見覚えがないのに、たしかに来たことのある場所。
とても手入れの行き届いた庭はさっきまで誰かが居たような気配がする。
しばらく何もないミュージアムをあてもなく歩いていると一際広い部屋に辿り着いた。 大きな窓の向こう側の庭はまるで絵画のようだ。 気がつくとその大きな窓の前には一頭の馬がとても満足そうに佇んでいた。 私はその姿がとても美しいと思い写真機を向けフィルターを覗いた。
その瞬間、蹄の音が部屋に鳴り響きいつの間にか馬はどこかに消えていた。 そしてその馬は二度と現れることはなく、がらんとした空間がどこまでも広がっているだけだった。