連載|すこし、遠回りをしていくから
2023.11.06
vol.5 - 車窓より -〈勝呂亮伍〉
暮らしている街から2時間と少し。往復で2000円と少し。
都内で友人に会うことに後ろめたさを感じなくなった頃、ひとり電車に揺られてこの街を訪れては、ただ帰るということをしていた。
地方の友人に会うには、誰かと一緒に遠出をするには、少し勇気のいる頃だった。
車窓から山の稜線を伝う電波塔がただ流れていき、私は静かな音楽に耳を傾ける。
決して満員になることのない電車は、わずかな乗客を乗り降りさせる。
そういう景色を見つめては、いくつかのことが思い浮かんでは消えていく。
大人になると、目の前の現象や起きていることが、想像を超えてこないということが多々あって、これからも少しさびしい気持ちを抱えながら予定調和の日々を笑って過ごしていくのだと思う。
きっと満たされることはないのだろう。
果たせなかった約束を抱えて、それでも揺られながら前に進んでいくのだろう。
空き家の多くなったこの街にも、それでもそこで何かを掴もうとしている人たちがちゃんといて、それらに光がさすことを私は祈っている。