連載|すこし、遠回りをしていくから
2023.10.23
vol.4 - 帰ってくる場所 -〈勝呂亮伍〉
東京に帰ってきた、と思うことは、東京で暮らしている、ということなのだな。
と、帰りの飛行機で東京の街を見下ろしながら実感する。
なんてことのない当たり前のことなのだけど、私はこの「帰ってきた」という感覚を実感することがとても好きだ。
ひとり暮らしを始めて間もない頃は、住んでいる街とマンションに、この「帰ってきた」という感覚を実感することは少なかったように思う。
あたらしい生活への高揚と緊張のせいか、ふわふわと浮いたような感覚があり、どうにも地に足がついていない感覚があった。
それがいつの日からか「帰ってきた」と自然に思えるようになっていて、もしかして、そういうことが「暮らす」ということなことかしら?と考えたりしている。
行きつけの店も、すぐに会える友人もいないけれど、私はこの静かな街をとても愛していて、帰ってくる場所があるから安心して、どこかへと向かっていけるのだな、と想う。
そういう場所や人が増えていけば良いし、私もそういう人でありたい。
あした晴れたら、少し遠くへ海でも眺めに行ってきます。