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10 MOMENT

田中真琴の「変わらない衝動と、まだ見ぬロマン。その両方が世界を広げてくれる。」|トキメキが発動する10の瞬間

人生に大きな影響を与えた運命の瞬間から、日々の小さな幸せまで。トキメキが発動する10の瞬間を語る「10 MOMENT」。
今回の語り手は、俳優・田中真琴さん。主演を務めた映画『ほなまた明日』が国内外で注目を集めるなど、表現者として多彩に活動しながらも、芯にあるのは“好き”を見つめるまなざし。思い出の温度を抱きしめながら、今を味わい、まだ見ぬ明日をそっと思い描く。そのすべてが、彼女の中にあるやさしさと好奇心を、軽やかに動かし続けていた。
「大人になると我慢しがちだけど、出会ったときの衝動を大切にしたい」と語る彼女の、トキメキが発動する10の瞬間とは?

INDEX

1.エジプトの遺跡や神殿に立ったとき

ずっと変わらない衝動に、素直でいたい

ずっと行きたかったエジプトに、思い切って一人で行ってきました。図書館で毎週エジプト文明の本を3冊ずつ借りて、コピーしてファイリングして、じっくり読み込みながら準備を進めました。現地ではガイドをつけず、できるだけ自分の足でじっくりまわるスタイルに。

一番ときめいたのは、遺跡や神殿に立ったときの空気感。カルナック神殿のライトショーでは、星空の下、暗闇を歩きながら光と音に包まれる体験に鳥肌が立ちました。誰もいない王墓の地下通路を懐中電灯片手にひとり進んだときも、ぽつんと人骨のようなものが見えてきて、あのゾクッとした感覚は今でも忘れられません。

博物館では説明書きが少ない分、事前に調べた知識が活きて、自分だけの発見につながるのが面白かったです。「過去を見に行く場所」というより、「今もこの下に何かが埋まっているかもしれない」と感じられるロマンのある場所。実際にまだ発見されていない王墓や遺跡も多く、どこを歩いていてもワクワクが止まりませんでした。

行く前は「一度行けば満足するかも」と思っていたけれど、まったく逆で。一年以内にまた行きたいと思っているくらい、魅力にあふれた場所でした。

2.ヘンテコなものを見つけたとき

ずっと変わらない衝動に、素直でいたい

好きなものに統一感はないけど、ヘンテコでかわいいものを見つけると、ついときめいちゃいます。ガラクタっぽい雑貨や、「ご自由にどうぞ」に置かれた謎アイテム。そういう“一点モノ感”に、昔から弱いんです。

理想の空間は、ジブリの『ハウルの動く城』のハウルの寝室。ごちゃっとしていて、魔法の道具が転がってるような、巣みたいな部屋に惹かれます。どこを見ても好きなものがあるって、本当に安心します。

たとえば今、うちのお風呂は自動湯沸かしじゃないので、たまごっちのキッチンタイマーを使っています。あの音が鳴ると「行かなきゃ!」って、ちょっと気分が上がる(笑)。自分の機嫌を自分で取る、そんな小さな工夫が好きです。

私の“トキメキ”は、流行りじゃなくて、ずっと変わらない衝動みたいなもの。出会った瞬間「これだ!」と思ったら、迷わず手に入れる(しかも、安いものばかり!)。大人になると我慢しがちだけど、この感覚だけは大切にしたい。だって、もう二度と出会えないかもしれないから。

3.「これだ!」と思う石に出会った瞬間

“光って見える”感覚に導かれて

石は昔から好きで、今でも気づくと拾ってしまいます。保育園の頃から海や川で石を拾っていて、実家のベッドの下はいつも石だらけ。大掃除のときに「まこと〜!何この石!」って母に言われてました(笑)。

どんな石が好きかと聞かれると難しくて…結局、フィーリングなんです。見た目が綺麗でもピンとこない石もあるし、逆に「これだ!」って光って見えるようなものもある。持ったときの重さや質感、形との相性で、“自分だけの出会い”だと感じる瞬間にトキメキます。

最近は、川で拾った石を分類できる図鑑を持って出かけて、「この石は〇〇川の特徴なんだ」なんて調べたりもしています。実は昔、考古学者になりたかった時期もありました。保育園のとき、「滋賀県立琵琶湖博物館」に父と行ったら、スタッフの方に「小さいのにこんなに石が好きなんて、博士になりなさい!」と言われたんです。そこから、高校生になっても本気で進路に考えていたくらい。でも地理が苦手で、行ったことのない地名がなかなか覚えられず、結局あきらめました。けれど今でも、歴史を感じるものには惹かれます。家には拾った石だけでなく、買った化石もいくつかあって、眺めているだけで心が落ち着きます。たぶん、これからもずっと集めてしまう気がします。

4.サッカースタジアムで応援する時間

感情が解き放たれる特別な場所

私の母は静岡県磐田市出身で、筋金入りのジュビロ磐田ファン。そんな母の影響で、私も自然と、ジュビロの試合を観るのが当たり前になっていました。

小学生の頃には、練習場で中山選手や名波選手にサインをもらったこともあります。“スターに会えた!”というあの高揚感は今でも忘れられないし、サッカー観戦の最初のトキメキでした。

スタジアムに行くと、芝の匂いや試合前のざわめき、サポーターの熱気に包まれて、自然とワクワクしてくる。席に着いた瞬間、「ああ、来たなあ」と実感します。大人になった今は、自分のお金でビールやごはんを買って観戦するのも楽しみのひとつ。“トキメキを自分で買える”感覚もあって、気づけば子どもの頃よりずっと本気で、勝敗にも一喜一憂しています。

サポーター席で声を出して応援するのは、私にとって最高のストレス発散。サッカーをあまり観ない友達を連れて行くと「思ったより楽しかった!」と驚かれることも多くて、選手のかっこよさやスタジアムの空気感をもっと知ってほしくなります。感情がわーっと高ぶり、現実を少し忘れさせてくれる、特別な場所だと思っています。

5. 思い出ごと味わうラーメンの一杯

香りに誘われて出会った、思い出の味

ラーメン、パスタ、うどん、そば……とにかく麺が大好きです。特にラーメンは、食べにも行くし、自分でもよく作ります。

いちばん感動した麺といえば、大学時代、東京での撮影帰り。お腹ぺこぺこで歩いていたとき、ふわっと漂ってきた香りに誘われて、お店の前にたどり着きました。女性がひとりで麺を食べている姿が見えて、あまりに美味しそうで「あれください!」と注文。出てきたのは、香り高いラクサ。それ以来、明治神宮前の『チャオバンブー』には、今でも通っています。ラーメン屋さんを選ぶときも、あまり調べすぎず、鼻を頼りにふらっと。嗅覚にはちょっと自信があります。

子どもの頃は、共働きの両親が遅くなる日に、家族で近所のラーメン屋さんに行くのが楽しみでした。ラーメンって、どこにでもあるからこそ、人生のいろんな場面に登場します。サービスエリアや受験勉強中の夜食、地方での一杯など、思い出込みで美味しいんです。

麺用のどんぶりもたくさん持っていて、気分や麺に合わせて使い分けています。一時期フォーにハマって毎日食べて研究していたとき、「ご自由にどうぞ」と書かれたフォーにぴったりの器を見つけて、運命を感じて即お持ち帰り。味だけじゃなく、器まで麺の楽しみは広がっています。

6.謎が解けて勇者になれた瞬間

現実を忘れる、完全没入のひととき

東京に出てきてから、謎解きにハマりました。きっかけは、舞台仲間に誘われて行った浅草のSCRAP。とにかく楽しくて、すぐにリピート。今では週1ペースで参加しています。

チーム制のものが多いので、自然と人とのつながりが広がります。「謎解きでしか会わない友達」もいて、その距離感も心地いい。年齢も立場も関係なく、“チームの一員”として夢中になれるのが魅力です。

いちばんのトキメキは、自分が答えを出せたとき。「すごい!」って言われると、ちょっとした勇者気分。解けなかったときも、答えを聞いた瞬間のアハ体験が楽しくて、繰り返すうちに法則が見えてくるのも面白いんです。

設定もさまざまで、勇者にも魔女にも女子高生にもなれる。スマホから離れて没頭できるこの時間は、今の時代にこそ必要な「完全に没入できる時間」だと思っています。

7.お祭りの賑わいに包まれる時間

軽い足取りが、トキメキを連れてきた日

初詣は毎年、静岡のおじいちゃんの家の近くの神社へ。屋台がたくさん並んでいて、なかでもサザエや貝の串焼きは、家族で買う定番です。人混みのなかをみんなで歩く時間が、自分にとっては幸せな思い出です。

だから、お祭りがすごく好き。人が多くてもそれすらも賑わいとして楽しめるし、京都はお祭りが多い街なので、子どもの頃から祇園祭などの大きな行事によく出かけていました。お祭りならではの空気感も好きで、屋台をのぞいて「どれにしようかな〜」と迷う時間すら楽しいんです。

東京に来てからは行く機会が減っていたけれど、数年前に明治神宮の初詣に友達とふらっと出かけたら、それがすごく楽しくて。やっぱり、軽い気持ちで動いてみるって大事だなと感じました。外では、いろんな場所でいろんなことが起きていて、思いがけず発見やトキメキに出会えるんですよね。

昔は食べ物に夢中だったけど、今は、鐘の音や提灯の灯りにふと足を止めてしまう。そこに込められた祈りや、儀式の背景を思うようになりました。そういう物語が感じられるのも、お祭りのトキメキの一つです。

8.スピッツの歌詞が沁みるようになったとき

初めて“歌に支えられる”感覚を知った

昔から、家の中ではいつもスピッツが流れていました。小学生の頃にはライブにも行っていて、気づけば草野マサムネさんに恋していたくらい夢中でした。

メロディーも声も好きですが、子どもの頃にはわからなかった歌詞が、大人になってからすっと心に刺さるように。印象が180度変わる曲もあって、聴くたびにまた好きになるんです。当時、大人たちが夢中になっていた理由が、今ならよく分かります。たとえば「ルキンフォー」。挫折したとき、泣きながら何度も聴いて、初めて“歌に支えられる”感覚を知りました。

散歩しながらのんびり聴くのも好きだし、ドライブにもぴったり。昼は「青い車」や「海とピンク」、夜は「ホタル」や「夜を駆ける」、「魔女旅に出る」など、気分に合わせて選ぶ時間にも、小さなトキメキがあります。

スピッツがつないでくれたご縁もあります。中学生の頃、掲示板で知り合った2歳年上の女の子と「文通がしたい」とお願いして始まったやりとり。彼女の美しい文字と、まっすぐな言葉に毎回ときめいて。もう18年、会ったことはないけれど、今でもつながっている、大切な絆です。

9.友達との出会いで人生が増えていく感覚

出会いの数だけ、想像が広がる

エジプトを旅したとき、現地で出会った人たちと友達になりました。旅に出ていなければ、一生出会わなかったかもしれない人たち。その中のひとり、現地でお世話になったおじいさんは、帰国後も「元気にしてる?」「うまくいってる?」とメッセージをくれて。遠くの国から誰かが自分を思ってくれている——その感覚が初めてで、心があたたかくなりました。

旅を通して友達ができたからこそ、自分ひとりでは辿り着けなかった歴史や背景、物語に触れることができたと思います。日本でも、友達それぞれが違う人生を歩んでいて、「こんな考え方があるんだ!」と驚くことも。誰かの選択や歩みを知ることで、自分の中に「人生がひとつ増えた」ような感覚があって、想像力がどんどん広がっていく。

自分の人生は一度きりだけど、誰かの話を通して疑似体験することで、周囲の人や未来の自分、もしいつか子どもができたときのヒントになるかもしれない。そうやって、見える景色や考え方が少しずつ変わっていく感覚にも、トキメキます。いつも、友達に「出会えてよかった」と思うし、心から感謝しています。

10.フィルムカメラの写真を見た瞬間

温度まで写る、“手ざわりのある記録”

フィルムはすぐに見られない分、現像するまで「どう写ってるかな」とワクワクします。仕上がった写真をあとで見ると、「こんなふうに過ごしてたな」って、タイムカプセルみたいに思い出がふわっと蘇る。その感覚が幸せで、毎回感動してしまいます。

甥っ子の成長も撮っていて、「このサイズのこの子は、もういないんだな」と気づくことも。フィルムで撮ると、人の温度まで写るような、“手ざわりのある記録”になる気がします。今しかない瞬間の尊さが、より強く残るというか。

今使っているのは、Canonのフィルムカメラを2台。とくに父のお下がりのEOS Kissは、オートフォーカスで気持ちよく撮れるし、初めて買ったデジタル一眼もKissだったから、なんだかうれしくて。写真好きだった父は、いつも撮る側で、家族の写真をたくさん残してくれました。そんな父の写真を見て育ったから、私も自然とカメラを手に取っていたのかもしれません。

日常でも旅先でも、このカメラで“今”を残していきたいと思っています。

思い出も、衝動も、まだ見ぬロマンも。そのひとつひとつを信じて動いてみると、思いもよらない景色や自分に出会えるのかもしれない。

俳優 田中真琴(たなか・まこと)

1995年生まれ、京都府出身。感覚ピエロやBiSHなどのMV出演をきっかけに注目を集め、ドラマ『時効警察はじめました』『インビジブル』、映画『魔法少年☆ワイルドバージン』『異物 -完全版-』などに出演。主演映画『ほなまた明日』(監督:道本咲希)では、写真家を目指す女性を繊細に演じ、国内外で高く評価された。雑誌やCM、舞台にも活動の場を広げながら、“好き”を軸に表現の幅を広げている。趣味はサッカー観戦、写真、謎解きなど。 Instagram:@mac0tter

CREDIT

photo:Kaori Someya
hair/make:Ayaka Sugai
edit/text:Hinako Masuyama

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PROFILE

HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

“トキメキ”発動中

HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

わたしたちを素敵な未来へ導く"トキメキの発動"にフォーカスし、その原動力を探求、発信しています。


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