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ぼくらのエンジン

”定義しすぎない”ことで生まれる表現の拡張性。近未来アクセ「中央町戦術工芸」が挑んだ「MT-125」コラボ秘話と創作活動の原点

独自のアクリル樹脂加工技術で新たなスタイルを提案し続けるデザインチーム「中央町戦術工芸」。2024年12月、ヤマハ発動機とのコラボレーションが実現。「MT-125」というバイクをベースにしたコンセプトモデルの展示がラフォーレ原宿で行われ、同時にアクセサリーの販売も実施。世界最大級のポップカルチャーイベント「東京コミコン2024」にも共同出展し、多くの来場者を魅了した。
「中央町戦術工芸」が手がけるキャラクターデザインをベースにした工業的かつ近未来的なデザインは、アニメカルチャーの浸透やSFブームもあいまって、今や世界中の人々から注目を集めている。先鋭的なブランドを率いるLuchiaさん(写真左)とg3pさん(写真右)の創作活動の原点や「トキメキ」について聞いてみた。

INDEX

飽くなきモノづくりへの好奇心こそ原点。「中央町戦術工芸」のはじまり

「中央町戦術工芸」を率いるお二人には、それぞれモノづくりにバックグラウンドがあるそうですね。

g3p:もともと平面のグラフィックデザインをやっていました。「中央町戦術工芸」で作っているような、立体のデザインをやっていたわけではありませんが、ハンドクラフトが好きだったので、本業の傍らでフェスに出展するなど自主制作活動に取り組んできました。

Luchia:私はアパレル出身で、長年服づくりに携わってきました。一見違う業界に見えますが「モノづくり」という意味では共通していることも多いです。特に「中央町戦術工芸」の製図を書いて試作品を作る制作プロセスは、洋服のドレーピングやパターンを引く作業に近いですね。

「中央町戦術工芸」といえば、独自の技術とその世界観が魅力的です。改めて、ブランドの始まりを教えてください。

g3p:「中央町戦術工芸」として活動を始めたのは約5年前です。ブランド名は、もともと拠点を構えていた目黒区中央町から取りました。活動初期から「テクノロジーとキャラクターデザインをベースにした、前人未到のアクセサリーブランド」として活動しています。既成概念をすべて捨て、「こんなことができないか?」「どこまでなら実現可能なのか?」を試行錯誤しながら製品化に取り組んでいます。

Luchia:スピード感を持って、フットワーク軽く動けることも私たちの強みです。その意味でも「戦術」という言葉がぴったりなんですよね。

g3p:私たちの強み、いわば「戦法」はアクリル樹脂を用いた独自の加工技術。その技術を扱えるようになるまで人材をゼロから育てることもしています。まさに「工芸」の世界で職人を育てるのと同じです。有難いことに、その加工技術に興味を持ってもらって「こんなものは作れないか?」とこれまでさまざまなコラボレーションもさせていただきました。

Luchia:制限を設けないことで、やれることが無限大に広がると感じています。また、技術はあるけど「私たちはこうである」という部分をあえて曖昧にしているので、コラボレーションの拡張性を感じられるというか。だから既存の枠組みやカテゴリーを超えたクリエイティブ活動ができているのかもしれません。

2023年3月には、旗艦店としてラフォーレ原宿に店舗をオープン。海外からのお客様も多くいらっしゃるそうですね。

Luchia:公式Instagramのフォロワーは8割が海外の方々。先日はラフォーレ原宿の店舗にイギリスからバイヤーの方がわざわざ来店してくださいました。

g3p:5年を経て、少しずつブランドの理解者が増えてきていることを実感しています。パッと見では「異物感」を覚えられる方も多いですが、それでも「中央町戦術工芸」のプロダクトが受け入れられているのは、日本のアニメや漫画のキャラクターデザインが私たちの身近な存在であることが大きく影響していると思います。

Luchia:一方で販売して誰かの手に届ける以上、私は美しくないとダメだと思うんです。「中央町戦術工芸」のプロダクトは「異物感」もあるし、未完。だからこそ、遠くで見ても近くで見ても美しいか、どうやって美しくするかというのにはこだわっています。私は特にアパレル出身なので、そこは入念にチェックしています。また、海外の方から注目していただいているのは「個性」への考え方もあると思います。彼らは人と違うものをつけたいという欲求があり、人と違うことへのおそれがない。その考え方と私たちのプロダクトのもつ独自性がフィットしているんだと思います。

過去最大規模の開発。目指したのはバイクという工業製品の新たな拡張性

今回、ヤマハ発動機とのコラボのお話を聞いた時、どのように感じましたか?

g3p:これまでコラボ作品はいろいろ作ってきましたがバイクは初めてだったので、率直に驚きました。開発規模としても過去最大のサイズでした。

Luchia:「そんなのやっていいの?」って(笑)。それに私たちがバイク自体への知識が長けているほうではなかったので、最初は正直あまりイメージが湧きませんでした。ただ、その分好奇心が強く湧いてきて、「何ができるんだろう?」とワクワクしました。未知の領域だからこそ、化学反応を楽しめると思いましたね。

 

今回の「MT-125」を通じたコラボレーションで特にこだわったところを教えてください。

g3p:未知の領域だからこそ、既存のバイクデザインにとらわれず、工業製品としての拡張性を追求しました。本来の「MT-125」の滑らかな曲面に対し、装甲や補強パーツを加えることで、試作機のような荒々しいデザインに拡張できたと思います。

コラボレーションを通じて「中央町戦術工芸」として、どんなチャレンジができたと思いますか?

g3p:これまでにない大規模なパーツ制作そのものが最大の挑戦でした。まず「やってはいけないこと」を把握し、その範囲内で可能なデザインを提案。結果として、「中央町戦術工芸」の技術を存分に活かした新たな表現を生み出せたと思います。

Luchia:バイクファンだけでなく、「中央町戦術工芸」の既存ファンにもバイクの魅力を届けることを目指しました。「東京コミコン2024」では多くの方が写真を撮り、初めて私たちを知るバイクファンからも反響がありました。いつか実際に走れるバイクのデザインにも挑戦してみたいですね。例えば『AKIRA』のような世界観を現実に再現できたら、きっとワクワクします。

クラフトマンシップ、コミュニケーション、音楽ーー中央町戦術工芸のインスピレーションを探る

お二人は普段、どんな時にトキメキを感じますか?

Luchia:人に関わりや、誰かを喜ばせることにトキメキを感じますね。アパレル時代から「この人にはきっとこれが合う!」と考えたものがハマった時は嬉しかったです。

g3p:私はやっぱりモノづくりそのものにトキメキを感じます。造形や素材に惹かれることが多く、ハンドクラフトでも市販品でも、デザイナーの細部のこだわりに気づくとテンションが上がりますね。

中央町戦術工芸の活動とは直接的には関係ないけれど、生活の中でときめく瞬間はありますか?

Luchia:音楽ですかね。実は「CTCRECORDS」という中央町戦術工芸を手がけるリグラフィックス社が企画する、音楽カルチャーを融合させた架空のレーベルを立ち上げました。もともと私たちが音楽活動をやっていたことがきっかけで発足。音楽活動は私たちとしても思い入れがあるし、このレーベルを大事に育てていきたいなと思っています。

最後に、今後の活動の展望を教えてください。

Luchia:2024年は「海外に種を蒔く」ことを目標に活動してきました。アメリカや中国での展示を通じて、現地での土台が徐々に整いつつあります。2025年はこの流れをさらに加速させながら、モノづくりの原点に立ち返り、現地生産にも挑戦したいです。ゆくゆくはこれまで作ってきたフェイスシールドやマスクからさらに拡張して、人体の一部になりうるデザイン、例えば義手や義足のような新しい領域にも挑戦したいと考えています。

g3p:「かっこいい眼帯が欲しかった」と言って、私たちの眼帯を買いに来る人も多いんです。

Luchia:「あるものでなんとかしなければいけない」というネガティブな状況を、個性に変換できるようなプロダクトを生み出していきたいです。福祉や医療、家具、建築など、新たな分野への可能性を探りたいです。

旧来の「こうでなければ製品にならない」という思い込みをすべて捨て、新たなモノづくりの可能性を追求する「中央町戦術工芸」。だからこそ、まだ誰も見たことのない自由な製品が作り出せるのだろう。今後、さらにグローバルに羽ばたきながら、未来を切り拓くファッションやアクセサリーの可能性を模索し、私たちにトキメキを届け続けてくれるに違いない。

関連リンク

<中央町戦術工芸>
・Instagram:@ctctyo
・X:g3p @g3p_graph、Luchia @luchia

<ヤマハ発動機>
MT-125

CREDIT

photo:Hiroshi Takano
text:Ayuka Moriya
edit:Hinako Masuyama

SHERE

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PROFILE

HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

“トキメキ”発動中

HATSUDO編集部 by ヤマハ発動機

わたしたちを素敵な未来へ導く"トキメキの発動"にフォーカスし、その原動力を探求、発信しています。


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